2003年10月8日 El Menzeh Olympic Stadium @ チュニス

日本 vs. チュニジア (1-0)

テレビ東京
実況:
久保田光彦、解説:浅野哲也、ピッチ解説:野口幸司


<日本代表メンバー>
GK:1 楢崎正剛
DF:21 加地亮、22 中澤佑二、17 茂庭照幸、5 三浦淳宏
MF:6 稲本潤一、18 小野伸二、7 中田英寿、10 中村俊輔
FW:11 鈴木隆行→20 大久保嘉人(後半49分)、13 柳沢敦→8 藤田俊哉(後半33分)

<得点者>
【日】柳沢(前半39分)

「アフリカ(アウェイ)での貴重な経験と勝利」

 我らが日本代表のアフリカ初陣である。試合前日にはアウェイならではのトラブルにより思うような調整ができず、ジーコ監督もご機嫌斜めで珍しく会見をすっぽかしたらしい。しかし、こんなことはアウェイにおいては日常茶飯事であろう。むしろ日本代表は十分な資金やサポーターの応援もあるホームで試合をこなすことに恵まれすぎているといっても過言ではない。多少の劣悪なコンディションでも十分なプレーをすることもプロには求められていることである。
 よく、ホームとアウェイではまるで戦術が変わってくると言われているが、簡単にその違いを概念的に説明すると、戦争で敵地に攻め込むのと、敵を国内で迎え撃つようなものである。補給経路も、作戦など無数の要素が変わってくるはずだ。サッカーの場合では、特に国際的なレベルにおいて、移動距離が異常に長くなり、サポーター(味方)の数も激減し、気候やグラウンドコンディションも著しく異なるだろう。


 FIFAランキングでは42位と格下のチュニジアだが、日本代表(24位)に以前敗れたことがあり、ホームで迎え撃つ覚悟が伝わってきた。特に前半38分に柳沢選手に得点されるまでの猛攻は明らかに日本を圧倒していた。後半も日本は幸運や好プレーに救われ、アウェイにおいて1点を守り抜き何とか勝利することができたといった印象である。一方で、チュニジアは今後につながる糧の大きい敗北を味わったのではないだろうか。

前半
 チュニジアはコンパクトで厳しいプレスサッカーを展開した。ディフェンスラインからトップラインまでが絶えず狭く統率され、日本に対して思うようなプレーをさせる余裕を与えなかった。日本ボールになったときには、すばやく攻守を切替え、日本がノロノロと展開した頃にはすでに何人かがマークに入り、パスコースを上手く封じ込めていた。
 日本は柳沢選手や鈴木選手がやったように、この厳しいプレスの弱点、すなわち裏によりおおきなスペースが空いていることを突くのは常套手段の一つである。しかし、タイミングよくオフサイドトラップを仕掛けることによって、何度フォワード陣がオフサイドになったかは数え切れないほどであった。
 そういった状況に陥ったときの打開策としては、逆サイドに大きく展開し、思うように絞らせない、相手をあちらこちらに走らせたり、振り回したりすることで、イラつかせ集中力を殺ぐことなどが挙げられる。しかし、どういうわけか日本はプレーが小さく、混んでいる場所、やりにくい場所へ好んで突進する傾向にあった。
 正直これはスコアレスドローになるかと思ったが、柳沢選手が厳しいディフェンスの隙を突いて最終ラインを突破し、前半38分見事ゴールすることができた。高い集中力のうちに得点できずに失点してしまった場合、その反動で緊張の糸が途切れてしまうことは珍しくない。チュニジアもその例外ではなかった。内容はともかく、結果的には1−0というスコアでリードすることができてラッキーだった。

後半
 守備重視の展開で、ファンとしてはあまり楽しめなかった。一点を守り抜く技術も重要だが、後半の早いうちからその作戦を取るならば、選手交代をするべきなのではないだろうか。藤田選手の投入はやや集中力の途切れだした後半15分くらいからでも早すぎることはなかっただろう。ほとんど終了間際になって大久保選手を投入する意義は何だったのだろうか。一般にこういった交代は単なる時間稼ぎと解釈され、絶対に勝たなければならないワールドカップなどではよく見られる光景である。しかし、親善試合であえてやる必要があるとは思えない。ならば試合の流れを変えられるような選手交代やフォーメーションの調整など新たな可能性を試すべきである。言うまでもなく勝負事には勝たなければならないが、試合内容に裏付けられていないものは諸手を挙げて喜ぶことはできない。

 この日の収穫は、アグレッシブにクロスを上げ、枠に入るミドルシュートを決めた加地選手と、新たなディフェンスラインであろう。

 久しぶりのテレビ東京での放送だが、私はこのサッカー中継に対して好感を持った。アナウンサーの久保田光彦氏は、日本が序盤に苦戦しているときはやや不安そうな口調であった。しかし、柳沢選手の得点後には一転して軽やかな実況で試合を楽しんでいる様子が伺えた。彼の日本代表を応援する熱い気持ちが伝わってくる何とも好ましいアナウンサーである。日本代表を実況するには、
それくらいの情熱を持ってもらいたいものである。
 ピッチ解説の野口幸司氏のコメントも非常に的確であった。日本代表のどこがよく、どこが悪いのか、緻密なプレーなどもピッチからの視点ならではの明快な説明によって、ファンはより試合を楽しみ、サッカーをより深く理解することできただろう。さすが元ベルマーレに在籍していただけの選手だ。近い将来サッカー番組の人気コメンテーターか、あるいはどこかの監督に就任するかもしれない。ちなみに、彼は典型的なサッカー顔である。メインコメンテーターの浅野哲也(元名古屋グランパス)氏の解説も良かったので、今後のテレビ東京での放送では続けて欲しいものだ。
 サッカー放送としても、日本とチュニジアのランキングやデータを紹介することによって、視聴者は陳列されている商品を手に取り、より確実にその価値を見極めることができるだろう。具体的には、FIFAランキング、これまでの戦績、そしてその日のスタメンとそのコンディションについては最低限説明があると望ましい。個人的には、日本代表レベルの試合では、試合開始30分前に両チームの紹介やこれまでの軌跡などのダイジェスト番組がもっとあってもいいと考えている。
 あえてテレビ東京の放送に対して不満を述べれば、テロップで『欧州組がアフリカを席巻』とされていることである。確かに欧州からアフリカ大陸に移動するのは、彼らにとって負担ははるかに小さく、より良いコンディションでプレーできる可能性は高いし、実際に彼らはゲームの中心人物であった。しかし、だからといって試合を見る前に中田選手らが活躍するかどうかはわからないし、日本組が活躍してもいいし、逆に日本がボコボコに返り討ちに合うかもしれない。
 サッカー番組において私が必要とすることは、事実を伝えることだけであり、補足的にその事実をサッカー初心者にもわかりやすく解説するということがあれば特に問題はないだろう。試合の流れとは関係のないコメントや単なる感想、下手なストーリー展開やニックネームの設定など、それらは集団格闘技であるサッカーの解説にとってたいした価値はなく、ノイズにさえなると考えている。

ハーフタイムのツッコミ
 ヒットアウェイという簡易バッティングマシン(?)は何だか良い。サッカー番組に野球製品を宣伝するテレビショッピングってなかなかないだろう。基本的に私はテレビショッピングの胡散臭さが好きである。「この商品はこんなにすごいんですよ〜」と必要以上に、時に勘違いながらも、時に視聴者がそう思っているわけないだろと呆れなくもないが、とにかく熱く語るプレゼンテーションにプロフェッショナルを感じる。何だか私もすぐにメジャーリーガーになれそうな気がしてきた。




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