「悔やまれるドロー」
我らが日本代表のアウェイ行脚シリーズ第2戦である。会場では一昨日まで雨が降り続けていたため、実況の青嶋氏いわく「ピッチがゆるい状況」だったという。「ゆるい」という表現は初めて聞いた。私が思うに、「やわらかい」か「ぬかっている」がより一般的に使われている表現だろう。 ブカレストにあるダイナモスタジアム(Dinamo Stadium)はテレビ画面からすると遠い方にベンチがあったり、そこで選手交代をしたりと不思議だったのだが、カメラがバックスタンド側にあるという珍しいポジショニングだっただけのようだ。 前半川口選手がムトゥにやや逆をつかれ失点してしまう。相変わらず研究室で見ていた我々は、やっぱり川口だからなぁと落胆する。しかし、私は川口独自のやり方にカリスマ性を見出す一人である。指示ができないゴールキーパーはキーパーとして機能しないのだが、言葉のハンディキャップを乗り越えようとする姿勢は好きである。野球で言うと新庄選手みたいなものだろうか。 それはともかく、正直前半は攻撃が単調で(私が未熟でわかってないのだろう)あまり記述すべき内容がなかった。というわけで、前半記憶に残っているシーンを実況の青嶋さんの面白い解説を踏まえてこのレポートを展開していきたい。私がいつも楽しみにしている欧州サッカーの実況はほぼ完璧なのだが、なぜか日本代表の実況では色気を出しすぎるため、いくつか珍コメントがあった。 青嶋氏いわく、前半日本は0.8点得点した(そんな得点はない)という。その内訳を振返ると、小野選手のセンタリングから柳沢選手のボレーと中沢のヘッドであろうか。確かに、相手ゴールキーパーのファインセーブで数点防がれたことは事実だ。 青嶋氏はパスの繋がりやプレイしている選手を名前で表現することが多い。そのボールの展開を説明する彼独自の手法であり、私は高く評価している。しかし、小野選手がボールをキープしていて、「おの〜、おの〜、おの〜、おの〜」と甘い口調で連呼すると、あたかもチームに小野という選手が何人もいるかのような印象を受ける。 後半の特に終盤は柳沢選手がタイミングよく裏をつけるようになり、攻撃にリズムが出てきた。柳沢選手は得意の省エネシュート、裏でフリーになりワンタッチで正確にコースを狙いゴールした彼も無論賞賛に値するが、誉められるべきは中田選手のアシストのように思う。柳沢選手が楽にシュートを打てたのもヒデが打ちやすい正確なボールを放り込んだからであろう。 中田選手のコメントを見てみよう。 「追いついて引き分けたけど、後半は相手も疲れもあったし、こっちの気合を見ると、2点3点取れた試合だった。1戦目(チュニジア戦)も勝てたけど、チャンスで点が取れていない。もう少し余裕で勝てたと思う。精神的な部分があるかもしれない。もっと強くなる必要がある。そうならないと、これから取りこぼしが出てしまう。」世界で一流のセリエAでもまれている選手ならではの非常に厳しい意見である。当たり前の話だが、日本代表がより上のステップ(FIFAランキング10番台)に進むためには、いかにしてミスを減らし、より確実にチャンスをモノにするということが重要になってくる。中田選手がコメントするように、アウェイだしドローならば良いだろう、仕方ないよなという雰囲気がどことなく感じられないわけでもなかった。精神的なスタミナが切れてしまっていたように思える。 辛口でお馴染みのセルジオ越後氏のコラムによると、相変わらず厳しい批判が述べられている。確かにハードスケジュールであり、私もレポートの着眼点に困っていることの擁護にはなる。 青嶋氏の珍実況〜最後は細かくつないでいこう ・「手元の資料によりますと身長176センチ、はたして本当かどうか?」・・・私たちに問いかけられても答えようがない。 ・坪井が冷静にクリアすると、「坪井クールです」・・・坪井選手がかっこいいというニュアンスになってしまわないだろうか。彼はクールという表現が好きだ。 ・ルーマニア注目のフォワード、ムトゥ選手がひじを振り回し反則を取られたとき、「ムトゥは『おいた』をしてしまう。」・・・「おいた」という表現はサッカー番組では相応しくないのではないか。 ・「ジーコさんこの表情です」・・・なぜ「さん」づけなのだろうか? 清水監督(私が平塚競技場に通いつめていた頃の日産の監督だったため、私は彼を監督と呼ぶ)の「川口は自信喪失していませんよ」というコメントは、川口はちょっとやそっとのミスどころで何ら心境に変化がない不思議キャラのようなニュアンスがこめられていたように感じた。 遠いルーマニアの空の下、日本人ファンの声援がテレビ越しに聞こえてきた。「中田がんばれ〜」、「日本!(チャチャチャ)」・・・。近い将来ヨーロッパでサッカー観戦したいものだ。サッカーの本場で観戦したことがない私の記事なんてとても記事とは言えないだろう。今後のレポートのためにももっと勉強せねば。楽しみにしていただいた皆様に深くお詫び申し上げます。中田選手とセルジオ越後氏のコメントがなければ、このレポートが締まりませんでした。 |
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