2004年2月18日(木/晴) 2006FIFAワールドカップアジ ア一次予選


埼玉スタジアム2002

 日本 vs. オマーン
(1-0)

得点者
久保(後半48分)

レフェリー マレーシア人ら

日本テレビ
実況:鈴木健
解説:北沢豪、ピッチ解説:武田修宏



<日本代表メンバー>
GK:1 楢崎正剛
DF:2 山田暢久、3 坪井慶介、5 宮本恒靖、14 三都主アレサンドロ
MF:6 稲本潤一、7 中田英寿(cap)、10 中村俊輔、19 遠藤保仁→8 小笠原満男(後半19分)
FW:13 柳沢敦→9 久保竜彦(後半0分)、20 高原直泰→11 鈴木隆行(後半37分)


結果以外にほとんど価値はない勝利
〜ジーコ監督解任論が強まりそうな内容


展望


 久し振りに(ほぼ)ベストメンバーの揃う我らが日本代表が、中東のオマーン(FIFAランキング66位)を迎え撃つ。日本は格上(FIFAランキング 28位)であるものの、多くの中東のチームに見られる中盤の早い展開と、カウンターアタックは、調子に乗せると非常に厄介な存在である。とはいえ、オマー ンにはプロリーグが存在せず、GKを除いて全てアマチュアの選手である。このグループリーグで最強とはいえ、FIFAランキングでも明らかな格下であり、 プロの日本は追われる立場を認識してプレイしたいものである。欧州組が揃った日本代表が本来の力を出せば、決して恐れる存在ではない。敵は、ワールドカッ プ本番のプレッシャー、コンビネーション、コンディションなど、内にあるだろう。2−0で勝利と予想。高原、中村のゴール。アシストは中田とサントスと予 想する。

前半
 格下のオマーンは恐るべき集中力と戦術を持って日本を脅かしている。決定的なチャンスはやや日本が多いものの、危うく、といったシーンが何度か見られ た。オマーンの典型的な攻撃パターンはハーフウェイライン手前くらいからでもガンガンとトップにボールを放り込むことであろう。日本のディフェンスが落ち 着く前のこのカウンターアタックは、非常に有効な作戦だった。また、中盤で欧州組に対して厳しいマークをすることによって、日本の攻撃力をほぼ封じ込める ことに成功していた。
 一方の日本の攻撃は、中盤でのマークが非常に厳しく、中田も中村もほとんど必ず二人がかりのマークでほぼ完璧に殺されている。どうも欧州組はコンディ ションが完全ではないようで、どの選手にもキレがなく、ボールの精度が欠け、コンビネーションでも噛み合わないシーンが何度も見られた。国内組も海外組に 頼ってしまっているのか、ボールを出して見殺しにしてしまうことが多く、パスの出し所に困り、フリーでプレイすることができなかった。
 高原選手が倒された一回目は、私が思うにファールである。しかし、二回目はダイブ(ファールではない)に近かったが、主審が反対側にいたのと、倒れ方が 上手かったのでPKになったのだろう。合わせて一本ということで文句はない。柳沢選手に対するファールもPKだったと思う。今夜のマレーシア審判はやや多 めに流す傾向にあった。あまり好ましくはない。
 オマーンディフェンスに対して、私がもし日本代表の監督として指示を出すならば、逆サイドにもっと大きく展開させている。あれだけ集中したマークをして いるのだから、逆サイドには少なからずスペースがあり、フリーの選手が残っているはずである。しつこいオマーンのチェックに対し、あっちこっちへ走らせる ことによってイライラさせ、ミスを誘うのである。そもそもボールをキープすることは、自分たちのリズムにとっても良い効果になるのだ。いずれにせよ、混ん でる方混んでる方にプレイしている限り、得点の確率はますます低くなる。
 また、遠藤選手、稲本選手(反則のホイッスルが鳴っていたが)のミドルシュートもテレビで述べられていたようにディフェンスラインを崩す有効な戦術であ る。精度はともかく、チャンスがあればガンガンシュートを打つのは鉄則である。
前半終了のホイッスルと同時に、60207人のブーイングが聞こえた。

後半
 後半開始15分くらいまでは、大きく逆サイドに展開するボールが多く、ゴールの匂いを感じさせるプレイ・・・久保選手のヘッド、彼のポストプレイから高 原選手のヘディング(逆サイドからの中田選手の大きなボールだった)、などが見られた。
しかし、オマーンの統率力には感服せざるを得ない。完全な引分狙いで、中央のディフェンスは極めて堅固である。私が記憶するディフェンスの中でも相当の厚 さだ。これではほとんどの攻撃は通用しない。
 終了間際のロスタイム、幸運にも久保選手のところにこぼれ球が転がり、ごっつあんゴールを決める。得点自体に文句はない。交代出場として見事に役割を果 たした。
 
まとめ
 ワールドカップ本番のような結果が求められる試合において、どんなに悪い内容であっても勝利することに価値はあり、一方で、どんなに良い内容であろうと 敗北することにほとんど価値はない。日本代表は明らかに前者であった。この勝利は結果オーライ的な産物であり、勝ったこと以外に喜べる要素はほとんど見当 たらない。ジーコ監督は60000人を超えるサポーターの往復ビンタでも食らっていればいい。オマーンでは「さいたまの悲劇」と後々語られるのかもしれな い。限りなく勝利に等しいアウェイでの敗北だった。
 欧州組が来れば最近不甲斐無い日本代表も活気付くかと思ったが、戦前の評判通り、全く冴えがなかった。日本と欧州では10時間ほどの時差があり、時差ぼ けを治すのに数日を要するだろう。ましてや、90分間集中力を維持し、激しい運動を続けられるような万全のコンディションまで持っていくならば、さらに数 日必要なのかもしれない。しかも、国内組とのコンビネーションを確認するにはさらなる日数が必要だろう。今夜の欧州組は残念ながら付け焼刃であり、絵に描 いた餅にすぎなかった。欧州の水質と日本の水質は違う。国内組は欧州組に頼ってしまい、欧州組はいつものチームメイトのレベルとのギャップに戸惑ってしま うだろう。

 今夜の試合内容では、とてもドイツに行けない。私ですらわかった日本代表殺しがある。まず、フォワードが柳沢選手の場合、彼の動きを封じるのは難しくは ない。彼は待ち系のフォワードでマークを外す動きが苦手であるため、徹底的にマークされると、ほとんどアクションがなくなってしまう。これまでにもそう いった試合が何度かあった。高原選手もどちらかといえば似たタイプであるが、ドイツで鍛えられている分、フィジカル的にもタフで、順応性はより高い。
 次に、ゲームメイカーとなる中田殺しである。どんなに優れたプレイヤーとはいえ、今日のようにしつこくマークされてはその能力も半減してしまう。しか も、彼に対してパスの受け手が鈍いため、後ろに戻すくらいしか選択肢がなくなり、これで日本代表の攻撃の多くは殺したも同然である。これは彼の所属するボ ローニャ殺しでもあろう。
 引いた相手に対してどのように攻めるのか、日本代表の意図はほとんど見えてこなかった。言い換えれば、日本の得点パターンはメンバー間でも共有されてい ないので、得点シーンも気まぐれなものということだ。自由にプレイすることと、目的がないことは違う。まぐれで勝ったとはいえ、今後を考えるとジーコ監督 の手腕は非難されるべきである。
 破れたとはいえ、敵将ミラン・マチャラ監督の手腕は誉められよう。日本の弱点を見事に突くこと、極めて固いディフェンスライン、中盤での厳しいマーク、 速攻(カウンターアタック)、これらをほぼ完璧に作戦を実行することが出来た。失点は単に不運だっただけだ。オマーンの選手も、これでプロになるんだ、と いうハングリースピリッツが伝わって来た。日本代表とオマーン代表、どちらに覇気があったか、言うまでもない。格上日本代表と互角に戦えたことは、若き猛 者たちの大きな糧になるだろう。

放送陣に対して
 アナウンサーの鈴木氏は、どうも誘導的な発言、やや乱暴に断定する発言が多すぎる。「〜ではないですか?」と、まるで決まりきった答えを聞くために解説 の北沢氏に振るので、一人芝居のような実況だった。テレビの前で冷たい反応をしている視聴者もいることを銘記すること。また、初戦だから、予選だから難し いわけではない。その条件は相手も同じであるのだ。言い訳にはならない。武田氏は、もっとピッチの視点ならではの解説をすること。「鈴木さん」と言ってや たら絡まない。
 ヴェルディ系列(松木・ラモス一派)の選手の解説を聞くのは正直耐えかねる。「気持ちですよね」という何だか理解できないようなものをやたらに連発する ので、さすがレジェンドは私の目に見えないものを感じているのだな、と何だか薄気味悪くなった。単に試合内容がわかっていないので、そんな言葉を繰り返す のだろう。ラモス、北沢氏のようなリーダーシップを発揮する選手は、サッカーのチームとしては一人くらいいてもいいのだが、テレビの解説としてはそれほど 適したタイプではない。
 なぜ香取信吾(漢字がわからん)というジャニーズタレントが必要なのだろうか。サッカーを何もわかっていないタレントに、一体何をさせたいというのだろ うか。そもそも半袖で大丈夫なのかと思った(後半の最後の方はコートを着用していたが)。トヨタカップのときに野球の原監督に振るのもそうだが、試合中に 素人に何のコメントを求めるのだろうか。そんな暇があれば、一言でもまともな解説をするよう努力した方がいい。

参考
中田選手のコメントはこちら
http://nakata.net/jp/hidesmail/hml210.html 
しかし、誰が何を見て知って、このオマーンを“格下”と決めつけてい たのか、本当に不思議だ。
 実際にプレイする選手としての気持ちはファンにはわかりませんが、FIFAランキングでも格下、相手はほとんどがアマチュアです。私としては、サッカー で飯を食っているプロなのだから、アマチュアに負けるというのはありえないと思います。揚げ足を取るようでごめんなさい。
 とにかく、中田選手がおっしゃるように、内容はともかく勝って良かった、結果オーライという気持ちは少しあります。

セルジオ越後氏のコメントはこちら
http://www.nikkansports.com/ns/soccer/sergio/2004/sergio040219.html
 私と同様に、むっつりおかんむりなご様子です。

採点の比較

右の列の赤字部分は「サッカーマガジン」より引用して います。


私の採点
サッカーマガ ジン
楢崎正剛 6.5
6.5
山田暢久
5.0
4.0
坪井慶介
5.0
5.5
宮本恒靖
5.5
5.0
三都主アレサンドロ
6.0
5.5
稲本潤一
5.5
5.5
中田英寿
5.5
5.5
中村俊輔
5.5
4.5
遠藤保仁
5.5
5.0
小笠原満男
5.5
5.0
柳沢敦
4.5 4.5
久保竜彦
7.0
7.0
高原直泰
6.5
5.5
鈴木隆行
-
-

 本日のMVPは得点者の久保選手とした。準MVPは相変わらず無失点の守護神楢崎選手である。
 他の選手の評価は全体的に厳しい。
 ディフェンス陣について、山田選手はイラク戦から進歩が見られず、同じようなミスをしていた。しばしば山田サイドから攻撃されていた。坪井選手は攻撃に 参加するタイミングが悪すぎる。 宮本選手は速攻に対応できなかったことがあった。 三都主の攻撃は良いが、今夜のようなディフェンス陣においては手放しで喜べない。
 MF陣について、欧州組はベストコンディションから程遠く、周りとの連携も危ういのはやむをえない。ボランチの稲本選手までマークが厳しかったことも あった。中田選手はらしくなく、キックの精度が悪かった。キラーパスが少なかったのは、周りとのコンビネーションがまだ理解されていないせいであろう。 中村選手は体調が良くないようだった。遠藤選手のクロスボールの精度はあまり良くなかった。小笠原選手は、得点のために投入されて、シュートを外してし まった。
 フォワード陣について、柳沢選手が今夜のA級戦犯。前半で交代させられたのは、ほとんどボールに触れないから(中村選手のコーナーに合わせたくらい か)。これではイタリアでも通用しない(トルシエ風に)。久保選手は、タイプの違うFWとして良いアクセントになった。ジーコ監督は今後彼を久保様と呼ぶ こと。高原選手へのマークは異常に厳しかったが、コンディションも万全ではない中で評価はできる。鈴木選手のプレイ時間が短すぎるが、それほど調子が悪く ないような気がした。次の試合は柳沢選手に代わってプレイしても良いだろう。



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