2004年6月1日(火曜日/屋内) 国際親善試合

札幌ドーム

(U-23)日本代表 vs. (U-23)マリ代表
(1-1)

得点者

大久保(後半30分)

警告
阿部(後半18分)

レフェリー
マレーシア人

テレビ朝日
解説:セルジオ越後、松木安太郎、ピッチ解説:川添孝一 実況:田畑祐一

<U-23日本代表メンバー>
GK:18 黒河貴矢
DF:3 茂庭照幸→24 菊地直哉(後半0分)、4 那須大亮→6 今野泰幸(後半0分)、12 北本久仁衛
MF:23 駒野友一、13 鈴木啓太(Cap)→10 松井大輔(後半24分)、16 阿部勇樹、
15 根本裕一→7 森崎浩司(後半0分)、8 山瀬功治→19 大久保嘉人(後半0分)
FW:9 高松大樹→17 前田遼一(後半14分)、21 坂田大輔
サブ:1 岩丸史也、22 川島永嗣、5 徳永悠平

「求むOA枠の攻撃的助っ人」

展望
 怪我人続出のヤングジャパン(FIFAランキング25位)が、FIFAランキング45位のマリ、アフリカ勢と戦う。
 怪我人(田中、トゥーリオ、林、石川らは負傷、平山は不在)が続出してしまったことについて、私は何かしら構造的な問題があるように感じているのはとも かく、山本監督はこの事態を前向きに捉え、本番で負傷や出場停止などで必ずしもベストメンバーでないときのシミュレーションを意識しているようである。ま た、基本的な身体能力が日本人とは著しく異なるアフリカ勢とオリンピック本番で対戦することにも貴重な経験となるだろう。
 山本監督は相変わらずOA枠について非常に神経質であり、全ては謎である。その意図としては、下手に格上の選手を連れてきて若武者たちの士気を損なわな いよう、公平な競争意識を根付かせているのだろう。実際にこれが効果的に作用し、U-23のメンバーひとりひとりがレギュラー争いに必死で、見ていても心 地好いエネルギッシュな試合ばかりである。最終的にオリンピック本番にはどの18人を選ぶのかますます難しくなり、山本監督の嬉しい悩みは尽きそうにな い。
予想スタメン

黒河
 茂庭 阿部 那須
鈴木  今野
徳永      森崎(浩)
松井
高松  坂田
 3-5-2のシステムとして、司令塔に松井選手を置いたこのフォーメーションを予想する。ただし、相手に応じて4バック気味の4-4-2や3-4-3な どのオプションも試してくると思われる。
 トゥーリオ不在のセンターバックは阿部選手だろう。ダブルボランチには鈴木選手が復帰し、両サイドもいつも通り、ディフェンスラインは比較的選手層が厚 く、安定している。得意とする集団の厳しいプレスを機能すれば、マリの身体能力も封じることが出来るだろう。
 一方で、司令塔を含む攻撃力は悩みの種だ。何が攻撃のパターンかと言われると、サイドアタックと阿部選手のフリーキックくらいしかないのが現状である。 特に、中央でのタメや中央からの展開が少ないため、このチームは守備力が高く攻撃力が低い地味な印象を与えることも事実である。OA枠で小野選手などのパ スの出し手がいれば、このチームは格段に強くなると考えているのだが。
 プレススタイルの守備は通じるが、現在の攻撃力は速攻でない限りなかなか通用しないだろう。アフリカのチームは気分屋さんの傾向にあり、明日どれだけ本 気で取り組んでくるのか定かではないこと、U-23はベストコンディションではないことを踏まえ、試合は1-1のドローと予想する。
 
前半
 我らが日本代表は、トルコ選抜戦から相当メンバーをいじり、テストマッチ的な色合いが濃いようだ。1.5軍くらいの力量でどれだけ通用するのか、過密日 程の本番で主力を休ませることができるような格下相手のシミュレーションと解釈すべきだろうか。
 しかし、日本はU-23だけのメンバー最後の試合、最後のアピールチャンスであり、一方のマリは本番を意識したということもあり、親善試合のぬるさを感 じさせず、序盤から両チームともまるで公式試合さながらの激しさである。
 ここで経験しておいて良かったと思われることが、マリの恐るべき身体能力の高さと意外な統率力である。足が長く、バネも日本人とは別規格なので、予期せ ぬ場所から足が出てきたり、ジャンプ力も素晴らしく、ギアの入り方もまるで違うのである。しかも、アフリカのチームらしからぬ多彩なパスワークや、ライン コントロールなどのチーム戦術なども持ち合わせており、身体能力だけに依存せず、モダンなサッカーも出来るのだ。
 山本監督は自著で述べられているように、対戦相手の特徴を良く研究しており、守備に関しては、常に複数人数マーク、絶えず最終ラインのコントロールが徹 底されていた。一枚は一般的なマーク、プレスの働き、残りはフォローの壁の役割で、マリの身体能力(伸びのあるドリブルなど)をほぼ完璧に封じ込めること が出来た。守備の統率力は、ベストメンバーでなくても相当に完成されている。
 しかし、問題は一方の攻撃である。前半8分、根本選手のダイレクトプレーから、坂田選手を経由し、山瀬選手の惜しいシーンに代表されるようなワンタッチ プレイは効果的だったのだが、それ以外の攻撃に物足りなさを感じたのは否定できない。サイドアタックでクロスボールが上がったとしても、空中戦では全く勝 ち目がなかった。かといってロングボール一発で裏へ放り込もうとすれば、マリの巧みなオフサイドトラップで、ほぼ完全に殺されてしまった(終了間際の阿部 選手から高松選手の裏への突破は確かに惜しかったが)。解説に指摘されたように、2列目からの飛び出しやミドルシュートなどでラインを翻弄したかった。も ちろん、出だしのスピードには黒人特有のバネに勝てる要素もなかった。前半は両者とも決め手に欠く膠着状態で終わる。
 
後半
 後半開始から、山本監督は4枚のカードを切って、3-4-3にシステム変更した。私の解釈は以下の通り。中央から展開できない弱点を3トップでカバーす るという采配なのだろう。茂庭照幸→菊地直哉(累積警告などで欠場したときを想定)、那須大亮→今野泰幸(システム変更上の交代、那須選手は使えると判 断。阿部選手がセンターバックへ)、根本裕一→森崎浩司(同じポジションならば、森崎選手の方がレギュラー)、山瀬功治→大久保嘉人(得点するための ジョーカー投入。裏狙いだろう。)
結果、これが大当たりする。
 新しい攻撃の起点となったのが、大久保選手と森崎選手である。両者とも裏へ走りこむタイミング、スピードが素晴らしく、しばしば裏でフリーでもらうこと が多く、論語ボールの受け手となった。さらに高松選手に代わり、前田選手を投入、そのまま下がり目の司令塔としたようである(変則的の3-4-3か3-5 -2)。
 しかし、20分、CKから失点する。これはキーパーの判断が遅れ、触れなかったからだろう。とはいえ、日本は追いつく精神力も技術もあり、山本監督も決 して投げるような監督ではない。その直後、坂田選手のパスを大久保選手が裏でもらい、あわやゴールという場面をマリのキーパーの超ファインセーブ(ワンハ ンドセーブ)で防がれる。そして、山本監督も同点に追いつくために畳み掛けるように鈴木選手に代わり松井選手(テレ朝によると、日本のジダンらしい)を投 入。彼が今夜の大ジョーカーであった。その直後にコーナーキックのこぼれ球をつめ、アシストするなど、攻撃的MFとして大活躍だった。
 マリも勝つための意欲を決して失っていない。温存していた主力を放出し始め、阿部選手と菊地選手がかぶるシーン、見事なループシュートなど、いつ追加点 をとって試合を決めてもおかしくはなかった。
 しかしながら、今日の選手交代には日本に分があった。今野選手から松井選手に繋ぎ、裏で大久保選手が絶妙のタイミングでもらい、待望のゴール。チームの 先輩である森島選手を髣髴させるようなパスのもらい方だった。
 その後両チームとも惜しい攻撃もあるが、タイムアップ。単なる親善試合以上の見ごたえがあった。

まとめ
 両チームともベストメンバーではないながらも、前半からオリンピック本戦を思わせるような勝利にこだわる白熱した展開が続いた。
 今日の試合の総括としては、守備は不運にも出場停止や負傷欠場などが重なった場合でもほぼ十分対応可能なレベルであることが判明し、一方の攻撃は、身体 能力や身長差が大きい場合などサイドアタックが封じられた場合、オリンピックレベルでは単調なロングボールを放り込む程度の攻撃はそれほど通用しないこと がわかった。
 しかし、攻め手がなくなった状況でも、攻撃では特に大久保選手と松井選手の大活躍、そしてもちろんチーム全体として決してあきらめない自信と強い精神力 が育まれているのは非常に喜ばしいことだ。マリに対して効果的な攻撃は、スピードのあるパス回しや展開、裏への突破などだったが、一方で身体能力の戦いと なる空中戦の競り合いや単純なスピード勝負では絶望的に勝ち目がなかった。また、ベストメンバーでないながらも、それを適切なカード采配で引分に持ち込ん だのは大きい。
 パスの受け手(いわゆるシャドー系の選手)として使える選手は何人もいるので、OA枠では小野選手など司令塔としてのパスの使い手がいれば、攻撃の幅は 格段に広がるはずだ。
 鬼軍曹トルシエの下で学んだことを日本人なりによくアレンジし、谷間の世代は今やメダルの獲れるレベルまで到達している。チームとして、健全な競争意識 を共有し、去年とは見違えるような完成度を誇るようになった。山本監督がここまで成長させ、選手もそれに応えていることは誉められて当然である。チームの コンセプトとして、プレススタイルを根付かせ、残された仕事はOA枠をどのように使うか(現時点で、私は攻撃的MFとGKの2枚と読んでいる)ということ だけだ。

 テレビでは一切触れられなかったが、今夜のレフェリーはおそらくマレーシア人(MAS)で、おそらくUAEラウンドにおけるバーレーン戦UAE戦のレ フェリーであろう。私がレポートを書いている範囲で言えば、彼は相当の劣悪審判である。ジャッジはかなり甘く、イエローカードの基準がわからず(2枚ほど マリに出されていてもおかしくなかったが)、もし本番で彼がジャッジになるようなことがあれば(アジア対決でもない限りないだろうが)、彼によってゲーム プランが壊されることを覚悟した方が良さそうである。

放送陣に対して
 試合開始前に、未知なるマリのオリンピック出場を決定したカメルーン戦を放送したことは非常に素晴らしいアイディアであった。しかし、分析的視点が全く 欠けているため、誰がキープレイヤーで、どんな攻撃をしてくるかはもちろん、最悪の場合、視聴者はどちらがマリでどちらがカメルーンだったことすらわから なかったかもしれない。
 
 松木氏について議論するのはあまりに時間と体力の浪費であるため、彼の発言は95%くらいの確率で意味がない、と言っておく。視聴者もいい迷惑だが、居 酒屋にいるサッカー好きのおっさんの声が誤って放送されていると割り切るしかない。
 セルジオ越後氏のくだらないジョークは笑えない。フォローがないと、彼の解説はやや一方的過ぎ、説教臭く感じた。本番でマリ戦になったときがどうこうと いう話は何度も繰り返すことでもない。
 田畑氏はサッカーの基本的なことを何もわかっていないのか、誰がプレイしているか的確に説明しないため、事実上アナウンサーのサボりである。雰囲気だけ を適当に述べるのは得意だが、試合内容をきちんと裏付けていないため、胡散臭さを醸し出している。
 川添氏は良くも悪くもピッチ解説を以上の解説であった。特に前半は、ベストピッチ解説者を思わせるような働きぶりだった。しかし、後半になると松木氏が 不甲斐無さすぎるのは自明として、あまりにメインキャスターと絡み、自分がピッチにいるプレイヤーとしての励まし、声援などが多すぎたように思う。ただ し、バランスを調整すればもっと良くなるということで、今後に期待している。唯一まともな解説らしい解説だった。
 ジョン・川平氏に比べ、滋英さんは単に馬鹿騒ぎするだけで能がない。

 ただし、札幌ドームのカメラのポジションが良いのか、カメラのズーム感は抜群に最高で、手前のサイドから反対側のサイドまでほとんど必ず映していた。お かげで注目されない逆サイドではどういった展開が行われているのかより良くわかり、レポートを書くにも非常に役立ったことは感謝したい。放送スタッフが意 識してそうしているのかどうかは定かではないが(意識していないと思う)、私の記憶にある限り、最高のカメラワークだった。
 しかし、残念なことにその遠目のカメラの弱点、つまり選手の顔があまり良く見えないことを、実況の田畑氏がほとんどフォローしていなかったので、結果的 に効果が薄れてしまったことは認めなければならない。

採点の比較

右の列の赤字部分は「サッカーマガジン」より引用しま す。


私の採点
サッカーマガ ジン
黒河貴矢
5.5
6.0
茂庭照幸
6.5
5.0
→菊地直哉
6.0
5.0
那須大亮
6.5
6.0
→今野泰幸
6.5
6.0
北本久仁衛
6.5
6.0
駒野友一
6.5
6.5
鈴木啓太
6.0
5.5
→松井大輔
6.5
6.5
阿部勇樹
6.0
6.0
根本裕一
5.0
5.0
→森崎浩司
6.5
5.0
山瀬功治
5.5
5.0
大久保嘉人
6.5
6.5
高松大樹
5.0
5.0
→前田遼一
6.0
5.5
坂田大輔
5.5
5.5

 今日のMVPは、該当者なし。準MVPをあえて言えば、ゴールした大久保選手であるが、他にも該当者多数のためなしとする。平均点6点以上の選手が本番 に生き残るという基準である。U-23では恒例のように、概してDF寄りになればなるほど評価が高い。
 GKは、失点のミスがファインセーブを帳消しにした。
 DF陣はアフリカ対策も万全で、見事というしかない。ただし、阿部選手は攻撃力を生かすためにもボランチが向いているように思う。菊地選手とかぶりあわ やというシーンを献上したその分減点した。
 今野選手もさすが、攻守に頼れる男になった。駒野選手は石川選手(と徳永選手)の代役になりそうだ。鈴木選手は、阿部、今野の両ボランチの攻撃力に比べ るといまいちアピール欠ける。松井選手は出場時間が短いながらも、これまでのベストマッチ。U-23の新たな攻撃の方向性、いくつかのパターンを示した。 根本選手は降格。逆サイドでプレイが続いているときに次のプレイを読む技術に欠け、ディフェンスも危うい場面があり、見せ場も序盤のワンタッチだけ。左サ イドのレギュラーは森崎選手に決定。これまでのベストプレイで、どのようにすれば身体能力に特徴のある相手を崩せるかということを意識したプレイだった。 山瀬選手は悪くはないのだが、相手に応じた効果的な攻撃と考えるとあまり評価は出来ない。大久保選手はジーコ監督に使いこまれたのか人気もあり、裏へ飛び 出すプレイに関しては、1,2を争う上手さである。ジョーカー候補。高松選手は、1度裏への飛び出し以外、ほぼ良いところがなかった。たびたびオフサイド にかかり、完全に封じられた。平山選手がU-19で結果を残せば降格候補。前田選手は、勢いに乗ったときに入れたのが良かったか、私が判断するには多少プ レイ時間が少ない。坂田選手も持ち前のスピードをアピールできず、地味に繋ぎ役として働くくらいだった。フォワードとしてディフェンダーの脅威となったと は思えない。同じく降格候補。



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