2004年6月1日(月曜日/晴) 国際親善試合

マンチェスター@マンチェスター・シティ・スタジアム

日本代表 vs. イングランド代表
(1-1)

得点者
小野(後半8分)

警告
なし

レフェリー
イタリア人

日本テレビ
ピッチ解説:舟津宜史、解説:北沢豪、実況:村山喜彦

<日本代表メンバー>
GK:1 楢崎正剛
DF:3 坪井慶介、5 宮本恒靖(Cap)、22 中澤佑二
MF:21 加地亮、6 稲本潤一→15 福西崇史(後半47分)、
18 小野伸二、14 三都主アレサンドロ、10 中村俊輔
FW:9 久保竜彦→11 鈴木隆行(後半15分)、20 玉田圭司→13 柳沢敦(後半15分)
サブ:12 土肥洋一、23 川口能活、2 田中誠、17 三浦淳宏、25 茶野隆行、
4 遠藤保仁、8 小笠原満男、16 藤田俊哉、19 本山雅志

「チェコ戦の勝利以上の価値あるドロー」

展望
 イングランド遠征第2戦、FIFAランキング25位の日本が第12位のイングランドと戦う。両者とも重要な試合(イングランドはEURO2004、日本 はワールドカップアジア予選)を直後に控えており、親善試合の生ぬるさはどちらにもないはずだ(ただし、こちらによると後半はテストマッチの意味もこめて、イングランドはメンバー交代を行うようである)。
 チェコ戦と同様、これがジーコ監督の審判の日となろう。前回の試合、チェコは前半テスト気味の3バックを試したということもあり、ジーコ監督がどれだけ 2002年のベスト16という結果から日本を成長させたかを計るには、むしろこの試合こそがより正確な指標となろう。いわば、EURO(欧州のワールド カップのようなもの)で日本がどれだけ通用するかということだ。
 今更言い訳することなど何もない。ジーコ監督本人がこれまで主張してきたような長い調整期間もあり、メンバー的にも中田選手を除けばほぼベストに近い布 陣を組むことが出来た。これで結果が残せなければ、解任論が叫ばれても仕方ない。
ジーコ監督明言スタメン

楢崎
坪井 宮本 中澤
稲本 小野
加地  三都主
中村
玉田 久保

 sportsnaviのジーコ監督の会見によると、アイスランド戦の流れでイングランド戦を迎えるようである。
 イングランドについては、私の予習不足もあり詳しくはわからないのだが、ワールドサッカーグラフィックのガイドブックによると、非常に王道的なチームの ようであり、対策を立てやすいといえばそのようである。
 しかし、先日のチェコ戦のような仕上がりを見せ、日本のプレススタイルを試したとしても、相手はプレミアの一線級の選手ばかりであり、噛み合う試合にな るかといえばそうだが、対策を立てれば勝てるかといわれると、久保選手と小野選手のコンビ(玉田選手なども加わるが)くらいの攻撃力では厳しい戦いが予想 される。ポイントは、早いパス回しについていけるか、ということだろうか。
 いずれにせよ、どんなに厳しい試合になろうとも、決して投げ出すことなく、最後まで全力でプレイすることは、深夜というか早朝に起きているファンのため にも貫いて欲しい。私たちが二度寝をすることがないような、熱い戦いになることを期待している。
 前半ベストメンバー、後半テストマッチ気味ということで、私は3-1でイングランドの勝利と予想する。
 
前半
 イングランドは序盤からオーバーペース気味と思えるようなほど、相当なレベルのパス回しで、日本はボールを触る隙すらほとんどないくらいだった。アイス ランド戦と同じように、序盤のCKから危うく失点するところだったが、完全に守勢に回った日本がこれも何とか辛うじてクリアすることが出来た。
 一方の攻撃について、これもほとんど通用しない。中村選手、加地選手のクロスなど、よっぽどの速攻でない限り、成功する気配すらない。やや苦し紛れ気味 のミドルシュートを放つのがやっとのようだ。
 イングランドは両サイドの遠い位置からでもクロスボールを放り込み、逆サイドにも大きく展開され、好きなようにプレイしているという感じだ。22分、楢 崎選手がジェラード選手の強烈なミドルシュートを取りこぼし、オーウェン選手に詰められついに失点する。
 しかし、日本はそれに振り回されることなく、しばしばアジアの格下がやるように中央の守りを絶えず堅固に維持し、辛うじて追加失点を免れた。結果的に、 2点目をどちらが決めるかがポイントになったが、それでも守備の統率力、ここで投げ出さない気持ちは素晴らしかった。
 その後終了間際辺りから、日本の攻勢が始まるものの、イングランドの序盤の猛攻に比べれば持たされているという雰囲気が否めず、イングランドの守備はそ れほど消耗しない楽なものであったように思う。久保選手に対する隙を与えていないことも、よく日本を研究している証拠だ。

後半
 前半の猛攻で油断したのか、試合開始直後の気の緩みがあったのか、中村選手が左サイトにはたき、サントス選手が中にゴロパスを転がし、中央で小野選手が 走りこみゴールした。ややキーパーの反応が鈍い感じもしたが、このスピードのある展開は、私たちサポーターだけでなく、イングランドにも大きな影響があっ た。
 その後日本は眠りから覚めたような猛攻を始める。確かにイングランドに比べれば荒削りとはいえ、イングランドはこの失点で心が折れてしまったのか、スタ ミナが切れてしまったのか、攻守は完全に逆転してしまった。
 日本の守備も蘇ったように反応が良くなり、これだけ高い集中力ならば、いかにイングランドとはいえそう簡単に失点しないだろうという雰囲気はあった。
 両フォワードを柳沢選手と鈴木選手という元鹿島勢に交代させたのはやや納得しかねるが、ジーコ監督が得点して来い、勝つんだというメッセージを送ったの はさらなる追い風になっただろう。
 いつ追加点を奪ってもおかしくない状況が続いたが、白熱した接戦でついにタイムアップ。日本の勢いは留まるところを知らず、一方のイングランドは面食 らったように見えた。私はイングランドがゴングに救われたように思った。

まとめ
 まさか日本がドローに持ち込めるとは、ほとんど誰も予想していなかったのではないだろうか。しかも、後半にはイングランドを圧倒する時間帯までも作っ た。ジーコ監督は審判の日になると、チェコ戦も、このイングランド戦も、なぜだか決まってついているように思える。その要因を考えたい。
 まず、彼が指揮したような気がしないのだが、結果的に前半は完全にアウェイ仕様で守備的に猛攻を凌ぎきり、偶発的な1失点(楢崎GKのミス)だけで折り 返すことができた。パスも回され放題、どこからでもクロスボールが放り込まれる非常に厳しい時間帯が続いたが、中央の守りをがっちりと固めることで決定的 に崩されなかった。それが大きな自信になったのだろう。格上のイングランドに対して恐れることなく、本気で勝つつもりでいたのだ。
 ピンチの後はチャンスが待っている。イングランドは日本が親善試合モードの気の緩みは微塵もなく、ここまで真剣に向かってくることを予想できなかったの だろう。日本は前半に自分たちがここまでやれたことで勢いに乗り、後半は尻上がりに調子を上げてきた。あれだけ自分たちのペースになっていれば、疲れを感 じることなく非常に長い時間あの勢いを維持することもできるものだ。相手チームの選手交代が遅れたことにも救われただろうが、柳沢選手を投入するという決 定的なミス采配を完全に吹き飛ばしてしまうだけの気合いだった。
 親善試合のつもりだったのか、調整不足だったのか、疲労がたまっていたのかわからないが、イングランドは絶望的にスタミナ切れで足が止まり、勝つ意欲は 損なわれ、最悪でもドローに持ち込むという感じさえした。驚くほど粘り強い日本の攻撃に対して、イングランドは今更カードを切るくらいではもはや勝ち越す ことは難しい状況だった。すでに精神力と体力で決定的な差があった。
 そういった状況を生み出した選手は誰なのかというと、ゴールした小野選手はもちろんのこと、私は中村選手の復活が極めて大きいと思う。シュートやクロス ボールはあわやというシーンばかりであり、中央からサイドへの展開によってイングランドは精神的・体力的に相当参らされたように見えた。そして、中村選手 はこういったプレイを続けることで、ますます調子に乗っていった。レッジーナに移籍し、大活躍したそのシーズンオフに古巣横浜Fマリノスと凱旋試合をやっ たときの彼を思い出した。

 早朝という多くの人が眠っている時間に放送されたのが本当に悔やまれる素晴らしい試合だった。サッカーがこの世にあって良かったとさえ思う。汚い反則も 1つもなく、退屈する暇もない、本当にあっという間の90分間だった。
 私は日本人ゆえ日本をべた褒めするが、実は前半終了時にはイングランドのプレイに心を奪われかけていたことも事実である。ランパード選手の背番号が21 だったら今週末彼のユニフォームを買うつもりだったのだが。また、今日の試合で確信したが、私の理想的なプレイとは、プレミアリーグのような早い展開と細 かいパスワークである。これぞサッカー、日本代表には体力があっても真似できない技術だと感動した。このプレイスタイルは日本と良く噛み合い、スタジアム で観戦していた大多数のイングランドサポーターも私たち日本人と同じように試合を楽しめたことと思う。

 私はあまりジーコ監督を誉める気にはなれない。その一方で、選手たちがジーコ監督の放任主義、難しいやり方に期待以上のレベルで応えていることには何と 誉めてよいかわからないほど喜ばしいことだと信じている。自分たちでどうやりたいかデザインし、それを最後まであきらめず遂行する。ついに日本代表がトル シエジャパンの軍隊サッカーという壁を打ち破った瞬間とでも言うべきだろうか。
 今夜見せたこの驚異的な精神力は、おそらく日本以外のどこの国にも存在しない。私は試合中に、敬愛する坂井三郎氏の『大空のサムライ』を思い出し、胸に 込み上げてくるものがあった。柳沢選手以外の出場したほとんどの選手は『ピッチの上のサムライ』だ。
 この日の勝因(厳密にはドローだが)は、90分間どう戦うかというプランを自分たちの力で立て、実際に前半の激しい攻めを凌ぎ、そして後半にその苦しみ を爆発させた精神力の賜物のように思う。このような試合が出来れば、ワールドカップでメダルを獲ることも決して夢ではないはずだ。

放送陣に対して
 日テレは巨人ブランドのテレビ局であって、絶対的なブランドを単に褒めちぎることしかできない。試合内容の分析は全くできず、素晴らしいプレイ(素晴ら しくなくても)に対してまるでテレビショッピングのように賞賛のコメント(いわゆる感想)を与えるだけである。もちろん我々一般人にも不可能なことではな い。
 私はアンチ巨人というか、特別野球ファンでもないため、お抱えの巨人軍の放送はそれでも気にしない。しかし、サッカー代表でそれを見ると、そんな放送で 楽しまなければならない視聴者が哀れに感じる。テレビショッピングを真に受ける人はほとんどいないだろうが、上から視聴者を見下すような放送を私は好まな い。巨人軍のように、豊富な資金力に物を言わせ、ブランドの寄せ集めをすること以外、日テレさんは得意ではないようだ。
 

採点の比較

右の列の赤字部分は「サッカーマガジン」より引用しま す。


私の採点
サッカーマガ ジン
楢崎正剛 5.5
5.5
坪井慶介
6.5
6.0
宮本恒靖
6.5
6.0
中澤佑二
6.5
6.5
加地亮
5.5
6.0
稲本潤一
6.0
7.0
福 西崇史 -
-
小野伸二
7.5
8.0
三都主アレサンドロ
6.5
7.0
中村俊輔
7.0
7.5
久保竜彦
5.5
5.5
→鈴木隆行
5.5
6.0
玉田圭司
6.0
6.5
→柳沢敦
4.0
5.0
ジーコ
6.5
6.5

 この試合の採点は、前半は
評価しようがないというくらいほとんど守備で猛攻を凌いだだけだったが、後半に活躍した選手を評価するように してある。本日のMVPは文句なく小野選手、準MVPは中村選手、その次をあえて決めればサントス選手だろうか。汚れ役立ったが、ディフェンス陣の集中力 も攻撃に劣らず、最近でもベストの完成度であった。
 GKは、失点の責任を負うべきだが、気持ちを上手く切り替え、その後はいつもの安定したプレイに戻ったことは評価できる。
 3バックは全員期待以上の働きだった。決して振り回されることなく、中央の守備を徹底して固めることでディフェンスラインそのものは崩されなかった。
 加地選手は右サイドの突破はほとんど通用しなかった。クロスボールも読まれていた。稲本選手はやや気負いすぎていたように思う。前半の猛攻で相当消耗し たのだろう、後半の尻上がりの時間帯に乗り損ねたように思う。足首は大丈夫だろうか。せっかく復調したのに非常に不安である。福西選手は出場時間がほとん どないので評価できない。小野選手はイングランド遠征のMVPでもある。中田選手の代役以上の働きをし、スルーパスはもはや世界一流クラスとなった。心配 なのは怪我だけだ。サントス選手は攻撃重視だったが、後半尻上がりに調子を上げ、アシストとナイスシュート賞だった。中村選手はカムバック賞である。彼も 復帰してくれ、やっと日本代表の試合を楽に見ることが出来るようになった。
 久保選手は、厳しい時間帯であったのもそうだが、イングランドに相当研究され、厳しいマークにあっていたようだ。しかし、スペースがない割にも何とかし ようとする意欲は見られた。鈴木選手はアイスランド戦と同じく、FKを取ったくらいの活躍。玉田選手は気が強いのか、ミドルシュートを放つ積極的な姿勢は 良かった。柳沢選手はジーコ枠で出場できたというだけの話。第2の大久保となってインド戦ではレッドカードをもらわなければいいが。
 ついにA代表の示すべき戦術をつかんだような試合であった。
ジーコ監督はこの勢いを壊さないようにすれば、本番の躍進にも期 待できる。


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