2004年7月31日(土曜日/曇) アジアカップ2004CHINA

重慶@重慶オリンピックスタジアム

 日本代表 vs. ヨルダン代表
(1-1)
4(PK)3

得点
鈴木(前半14分)

失点
シェルバイエ(前半11分)

警告
三都主(後半43分)

レフェリー
マレーシア人

テレビ朝日
解説:松木安太郎、ピッチ解説:川添孝一、実況:田畑祐一

<日本代表メンバー>
GK:23 川口能活
DF:3 田中誠→18 松田直樹(延後9分)、5 宮本恒靖(Cap)、22 中澤佑二
MF:21 加地亮、4 遠藤保仁→6 中田浩二(後半11分)、15 福西崇史、14 三都主アレサンドロ、10 中村俊輔
FW:11 鈴木隆行、20 玉田圭司→19 本山雅志(後半27分)

サブ:1 楢崎正剛、12 土肥洋一、17 三浦淳宏、25 茶野隆行、8 小笠原満男、16 藤田俊哉、24 西紀寛、26 山田卓也

「最悪のコンディション、悪運の勝利」

展望
 アジアカップのグループリーグを首位通過した日本代表のトーナメント初戦、相手はFIFAランキング40位のヨルダンと対戦する。
 私は不勉強ながら日本の試合以外観戦していないので、ヨルダンは中東の新興勢力という基本的に謎のチームである。最新のグループリーグの戦績は、初戦の韓国にスコアレスドロー、クウェートを2-0で下し、UAEにもスコアレスドローという勝ち点5、得失点差2(終了直前の2得点)ということから、非常に手堅く粘り強いサッカーをすることくらいしかわからない。私の想像(妄想)によれば、ヨルダンの実力は日本のオリンピック代表とほぼ同じくらいなのではないだろうか。
 一方の日本代表について、サブのメンバーがいないのではないかというくらいメンバーを固定し、彼らに自らの力で試合を構築させようとしているようだ。この采配に対して好みは分かれようが、これまで結果を残している以上、充分機能していると解釈するべきであろう。おそらく、中東特有のカウンターアタックを得意とするようなヨルダン対策も万全のはずであり、どうすれば勝てるのか、どうやって勝つのかというデザインがこれまで同様チーム全体で共通理解されていることだろう。
予想スタメン

川口
田中 宮本 中沢
 遠藤 福西
加地      三都主
中村
玉田 鈴木

 予想スタメンは、特別怪我人や負傷者がいないため、恒例の固定メンバーで望むことだろう。
 チームとして勝利への道筋が明らかになっている以上、日本の勝利は揺るがない。個人の能力では明らかに日本に分があり、総合力でも日本が勝るはずだ。作戦的には、高い位置でのプレスや早いパス回しなどカウンター殺しがはまったイラン戦の延長上に勝機を見出せるだろう。日本代表の進化の度合いを目の当たりにできると期待している。
 重慶の厳しい暑さとヨルダンも相当日本対策を練ってくることを考慮して、1点差勝負、とりわけ早い時間帯での先制点の重みが増してくるはずだ。延長戦での勝利は、これまでの固定メンバーの消耗を考えると望ましくない。また、先行逃げ切り型の作戦がはまることは好ましいのだが、相変わらずの省エネ時間もあり、ファンとして90分全て楽しめるとは考えにくい。
 この試合1-0で日本の勝利と予想する。得点者は中盤の選手、中村選手のセットプレー絡みだろう。

前半
 ヨルダンは、わかりやすい軍隊サッカーでいわゆるEURO2004のギリシャのようなチームである。アフリカンに見える選手も混ざっており、彼らの身体能力はアジア人の比ではない。以上を考慮して、一言でヨルダンを表現すれば、「黒いギリシャ」とでもなるだろうか。
 軍隊サッカーというのは、徹底していくつかの約束事を守り、決まりきった動きをするというニュアンスで使っている。例えば、非常に効果的だった作戦は、複数人数で加地サイドを突破すること、日本の運動量の少なさを意識し、必ず先にボールを拾うこと、1対1の個人技対決は控え、組織力を生かし早いパスワークで日本のスタミナを消耗させること・・・といったところであろうか。簡単に言えば、とにかく運動量が多く、集団戦術を重んじ、先手必勝を狙っていたようだった。
 一方の日本だが、2試合に一度は疲労が最も蓄積される時間なのか、タイ戦と同じく非常に動きが悪く、スロースターターである。日本がやりたいようなサッカーを展開され、それについていく体力がない。試合開始早々11分、日本の右サイドからの突破で、田中選手を振り切り中央の選手へクロス、中澤選手が予想していなかったのか、ほぼフリーでヘディングを許しまさかの失点してしまった。
 これで気持ちが萎えたかに思えたが、ここが日本の底力と思えるところである。直後の14分、中村選手のFKから中澤選手がヘディングし、キーパーがこぼしたところを鈴木選手がごっつぁんゴールする。相手の勢いを封じる良い得点シーンだった。
 しかし、その後の日本の攻勢が続かないどころか、ヨルダンの軍隊サッカーは疲れることを知らないようである。とりわけ驚異的なのはトップとバックの間のスペースから放たれるミドルシュートである。アジアでこのレンジから積極的にシュートを打つ選手はおそらく非常に少ないだろう。確かに精度に若干問題があるものの、意識してここまで撃てる選手は滅多にいない。日本は得意の徹底して最終ラインにへばりつく作戦も見透かされていたようである。日本は何とか攻撃につなげるも、運動量が少なく、セットプレー以外は不発気味である。

後半
 前半あれだけ飛ばせばペースダウンすると思われたヨルダンだが、気温30℃程度では何ともないのだろうか。
 中盤のポゼッションを高めるべく、11分中田浩二選手を遠藤選手に代わって投入する。しかし、久しぶりの出場だからなのか、中田選手が機能しているとは言いがたい。ジーコ監督の好みはともかく、ボランチでの練習をしていた藤田選手や戸田選手や明神選手など泥臭いプレイをするボランチが恋しくなった。
 さらに27分、ドリブル突破できないと厳しい玉田選手に代わり、よりスマートな本山選手を投入する。多少90分で決着をつけようと意識がうかがえるようになるが、相手GKはベストイレブンだけあり、ファインセーブ連発で日本の勝ち越しゴールを許さなかった。これには脱帽である。

延長前半
 特に日本の消耗が激しく、日本はつまらないミスなどもあり、守勢一方である。すでに心はPK対決だったのだろうか。両チームアクション少なめで終わる。

延長後半
 両チームさすがにバテバテであり、日本は投げやり気味に前線にロングボールを放り込み、途中交替の選手がシュートするくらいの攻撃くらいが精一杯のようだ。両チームますますアクションが減り、PK戦へ突入する。

PK戦
 先攻は日本、後攻はヨルダンで開始。ヨルダンのキーパーの調子の良さと、チームの勢いを考えれば、日本の技術の方が高いとはいえ、やや分が悪いと予想していた。

@日本× ヨルダン○
 中村選手がEURO2004のベッカム選手のように軸足を滑らせ外す。0-1

A日本× ヨルダン○
 三都主選手が中村選手と同様踏み込んだ際にバランスを崩し外す。

 この直後、宮本選手がレフェリーに抗議し、主審がエンドを交代する。しかし日本のやり直しは認められず、ヨルダンからの再開となる。また決め、これで0-2となる。私もPK戦の途中でのこの変更は初めて見たので、やり直しが認められなかったのが誤りなのかどうかはわからない。

B日本○ ヨルダン○
 これで日本が外し、ヨルダンが決めると3-0でゲームオーバーだが、福西選手、ヨルダンの選手も決める。1-3

C日本○ ヨルダン×
 日本が外せば試合終了だが、ヨルダンGKが触るも中田選手が運良く決める。川口選手のワンハンドタッチでセービング。これで2-3となる。

D日本○ ヨルダン×
 日本が決めヨルダンが外さなければ試合終了という厳しい状況だが、鈴木選手が決める。ヨルダンの選手はミスキックで枠外へ。執念で同点に追いつく。3-3

 6本目以降はサドンデス(sudden death)で、そのターンで敗れれば自動的に負けが決まる。

E日本× ヨルダン×
 中澤選手のシュートは相手GKのファインセーブで阻まれる。川口選手が止めなければ負けが決まるが、何とかタッチしバーに救われる。3-3

F日本○ ヨルダン×
 宮本選手が決め、日本初のリードとなる。ヨルダンのシュートは惜しくもバーに嫌われる。4-3で日本の勝利となった。

まとめ
 展望で私は好意的に予想したが、全く正反対の結果となった。もしPK戦で敗れていたら、このタイトルは「ジーコ監督解任へ決定打」となっていた。
 タイ戦を髣髴させるようなダルダルゲームであり、グループリーグを突破したヨルダンはタイほど弱い相手ではなかった。日本が相手を多少なめてかかっていた隙を突かれた序盤の失点で、正直敗北も覚悟したが、その直後に同点に追いつくことができたことはさすがである。しかし、それ以上褒めるべきことはほとんどない。
 私は原則的にどんな監督であれ、最低限結果を残せばそれなりに尊重するつもりである。ただし、今夜の試合はあまりにもまぐれすぎた。延長を含めた通常の試合では、明らかに日本が苦戦する時間が長く、何とかPK戦に持ち込むことができ、たまたま勝利が転がり込んできたにすぎない。セットプレー以外の主な意図しているように見えた攻撃は、ボールを持ったらすぐに前線へ大きく放り込むくらいだっただろうか。基本的に、ヨルダンはその対策すらも万全だった。勝てなかったことに同情すら覚える。
 タイトルにもあるように、日本がPK戦で勝てたのは単に運が良かったから(この強運はまさに神がかり的である)に他ならない。疲労のピークである固定メンバーをさらに酷使したため、わざわざ相手に付け入る隙を与えてしまったようなものである。ヨルダンの個人的な技術レベルは、決定的なチャンスで何度も外していたことから、どう贔屓目に見ても日本ほど高くないことは自明だが、それでもEURO2004のギリシャを髣髴させるような運動量の多い軍隊サッカーは、半病人のような日本代表には紛れもなく厳しすぎる相手だった。中盤の間延びしたスペースにガンガンボールを放り込み、 走りこみ、ルーズボールを先に拾い、攻撃の主導権を握っていたのはヨルダンである。この入念に練られたゲームプランで勝てなかったのは、残念ながら若干運と実力が足りなかっただけに過ぎない。この苦戦について、ジーコ監督が責められて当然である。

 私もイラン戦で褒めた直後にまたこの手のかったるい試合をまた見ることになって非常に気が落ち込んだが、まだトーナメントは継続中ということを考慮し、この試合が最悪の出来だったので、反省を前向きに生かして欲しいとしか言いようがない。この日浮き彫りになった問題は、これまでさまざまな場所で何度も繰り返し指摘されてきたことだ。アジアカップで最終ラインを支えてきた田中選手が負傷退場したため(戦線離脱は心からお気の毒に思うが)、次の試合のため新しい松田選手がようやく活躍できるチャンスだと思う他ないだろう。とにかく、優勝という結果がなければ、ジーコ監督のクビが飛ぶ可能性は高い。

 なお、おそらくこのマレーシア人のレフェリーが私のレポートで常々批判している悪名高き笛吹き魔である。彼が日本に対して有利なジャッジをしたことは多分一度もない。

放送陣に対して
 相変わらず松木氏は何一つまともなコメントを残さなかったため、私も何一つコメントすべきことはない。彼は私のホームページを読んでも全く理解できないだろう。彼の戦術の理解は、高々このウェブサイトを好んで訪れる皆様以下である。
 あえてツッコミを入れさせてもらえば、「ヨルダンコールを日本コールのつもりで聞けばいいんですよ」といった発言の意味が私には全く理解できなかったことだけは記しておきたい。


採点の比較

右の列の赤字部分は「サッカーマガジン」より引用しています。

私の採点
サッカーマガジン
川口能活 6.5
*
田中誠
6.0
*
→松田直樹 -
*
宮本恒靖
5.5
*
中澤佑二
6.0
*
加地亮
5.0
*
遠藤保仁
5.5
*
→中田浩二 5.0
*
福西崇史 6.0
*
三都主アレサンドロ
5.5
*
中村俊輔
6.5
*
鈴木隆行
6.0
*
→本山雅志
6.0
*
玉田圭司
5.5
*
ジーコ
5.0
*

 本日のMVPは存在しない。あえて挙げれば、試合中にファインセーブを連発し、PKで2本止めた川口選手だろうか。しかし、相手GKのPKの読みが数段当たっていたため、何とも評価しがたい。フィールドプレイヤーで言えば、珍しく運動量が非常に多く、チームで唯一といっていいほど気を吐いていた中村選手であろうか。
 今夜の試合で、良い選手を挙げる方が難しいのだが、劣悪なコンディションの中でも気迫が伝わってきた選手と得意のごっつぁんゴールを決めた鈴木選手を6点以上と評価したい。
 川口GKはグループリーグのベストイレブンに選ばれなかったが、120分(90分+延長30分)の試合の安定度ではそのヨルダンのベストGKに劣ることはなかった。アジアカップでは大活躍、現在の守護神であることに議論の余地はない。
 ディフェンスラインについて、中澤選手はおそらく疲労がピークだったのだろう。これまでの彼らしくなく、相手に対する反応がワンテンポ遅れ、失点につながるミスをしてしまった。しかし、その分攻撃参加と粘り強い守備でカバーしたため、帳消しで6点とした。宮本選手はいくつか細かいミスで危ういシーンを謙譲してしまった。これも疲労によるミスだろうか。田中選手も疲労のためかややスロースターター気味であった。松田選手は試合時間が短すぎるので評価できないが、次の試合ついに先発出場するのではないだろうか。新しい選手がどれだけ活躍できるのか興味深い。
 中盤について、中村選手と福西選手以外は物足りなかった。福西選手は少ない運動量ながらも要所要所でカットが良かった。遠藤選手はおそらく疲労が蓄積していたため、中盤のスペースに対する反応がやや遅れ気味で、引いたために生じる中央のスペースでミドルを打たれるなど、ここ最近のワーストだった。アピールは何発かのシュートくらい。次はコンディションの回復を願う。中田選手は完全にジーコ枠で、試合の感覚が鈍っているように見えた。アピールポイントは延長後半の2本のシュートのみ。両サイドについては、アジア杯ではあまり活躍していないので、いい加減先発出場させる必要もなさそうだ。 中村選手は私が勝手に思うこうあって欲しいというプレイでチームを鼓舞させようとしていたように見えた。準1アシストとなったセットプレーの破壊力はこのチームで最高の武器だ。
 先発二人のフォワードについて特徴をまとめると、鈴木選手は反則をもらうことと武田修宏選手が得意としていたごっつぁんゴール(私が最も嫌うゴール)だけは良い。玉田選手の高速ドリブルは、マークされるなどしてスペースがなくなったとたんに威力が激減するのが致命的な弱点である。両者ともあまりに簡単につぶされやすいので、その長所を生かせるよう開花してもらいたいものだ。本山選手は本職のポジションでないながらも、自分の長所とそれを生かす方法をより良く理解している。もう少し早い時間での投入でも良かったと思うが。
 ジーコ監督はこの日の苦戦のA級戦犯である。疲労がたまった選手がまともに動けないことがここ最近のアジアカップでも明らかになっていたにもかかわらず、わざわざ下策を選んだ罪は重い。


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