「優勝候補相手に善戦か」
展望 遂にオリンピック本番、日本(FIFAランキング20位)がギリシャで迎え撃つ相手はFIFAランキング22位、南米のパラグアイである。 この死のグループBを突破する条件(上位2チームが決勝トーナメント進出)は、最悪でも勝ち点5(1勝2分)以上、得失点差以下の条件の競り合いになるかもしれない。正直、非常に厳しい戦いが予想されるが、負けたらその時点でゲームオーバーというくらいの覚悟が伝わってくるような試合に期待したい。 私が思うこのチームのピークは、実は2月の韓国戦である。UAEラウンドでは原因不明のコンディション不良に見舞われ、それ以降イマイチパッとしない内容が続いたというのが2004年の流れである。 これまでさまざまな場所で指摘されているように、このチームには中盤の軸となる選手、中盤でタメを作れるプレイが不足しているのである。いわゆる枝や葉となる選手は生え揃っているものの、それを生かし支える幹となる選手が欠乏していたのである。これはしばしば欧州リーグの下位チームと上位チームの決定的な差の一つとなることが多い。そのため、守備は堅固だが、攻撃が地味、破壊力不足という印象を与えてきた。 しかし、これを根底から覆す可能性を秘めているのが小野選手の加入である。現地で小野選手が合流してから、五輪代表から好感触なニュース以外伝わってこない。彼がどっしりとした幹となることで、本番では想像以上に若き枝葉が生き生きとすると思われる。戦術的には、2月の韓国戦で見られた流動的な動きがさらに活性化されるのではないだろうか。あれ以上のパスワーク、スピードがあれば、どんな相手でもそう簡単に敗れることはないはずだ。 とはいえ、このチームがオリンピック本番に耐えうるものなのかということにはやや疑問が残る。悪く言えばぶっつけ本番、小野選手を中心としたチームで何ら結果を残していない以上、コンビネーションの完成度は強豪相手に信頼するに足るとは言い切れないものがある。小野選手が徹底してマンマークされたときなど、その対応策までは準備万全だろうか。 それでも前向きに捉えれば、小野選手加入後の日本代表は相手にとっても完全なる未知数ということだ。また、このグループにおいて日本は実績のなさから勝ち点3を奪える格下と思われている節があり、その油断が味方する可能性はある。この試合で一気に勢いを掴めば、グループリーグ突破は決して夢ではない。 予想スタメン フォーメーションは3-5-2、小野選手が司令塔に入る最も攻撃的な布陣と予想する。私の希望も含め、スピードのある両ウィングを置いた。山本監督のお気に入り度からすれば、徳永、森崎が入るだろう。フォワードは田中、平山の不調を考慮した。 この試合で負ければグループリーグ突破はほぼ絶望的になる。日本が引分以上に持ち込むためには、先行逃げ切り型しかないだろう。さすがにこれまでユーティリティ性を重視してきただけあって、多少のポジション変更、システム変更によっても戦力は全く変わらない。なるべく早い時間に先制点を奪い、粘り強く守りきることはこれまでの試合からも得意な勝ちパターンと言えよう。 こういった短期決戦においては、ランキングも獲得タイトルもほぼ全く関係がない。いかに自分達のサッカーを続けられるか、自分達の時間をより長く続けられるかが疲労を感じさせない理想的な戦い方となる。期待も込めれば、この試合1-1のドローと予想する。 前半 パラグアイは4-3-3、日本は小野選手を司令塔にした3-5-2のスタートとなった。 試合開始早々5分、那須選手が背後にいた7番ヒメネス選手に対する反応が遅れ、クリアしそこなったところをゴールされる。これでこのヒメネス選手は前半だけでも驚異的な爆発力を引き出してしまうことになった。 勢いに乗ったパラグアイは中盤のプレスが素晴らしく早く、特にハーフウェイライン辺りから自陣においては、日本がボールをほとんど回せることを許さなかった。ボールをキープすることができず、セカンドボールはほとんど拾うことができなかった。苦し紛れのロングボールも消極的に突っ立っているだけの選手には届かない。あえて言えば、小野選手のダイレクトプレーなどは通用しそうだったが、回りと噛み合わず、日本にはもう何人か小野選手がいないと…、と思わせるようなほぼ絶望的な状況だった。 パラグアイは得点した日本の左サイドからの攻撃を続け、3-5-2の弱点となるウィングとバックの裏を執拗に狙う試合巧者振りを見せた。 しかしラッキーな日本は、22分、大久保選手と高松選手のペナルティエリアでの混戦からPKを獲得し、小野選手がゴール、同点に追いついた。 しかし、パラグアイはさらに本気モードになり、日本のゴールやや右側で徳永選手のファールを誘い(イエローカード)、FKのチャンスを得る。見方に当たりながらも運良くゴールマウスに吸い込まれ、すぐに勝ち越しに成功する。 さらなる追加点を狙うパラグアイは攻勢を維持し、日本の左サイド突破を繰り返す。この展開力は見事であり、日本は正直ついていけないという危うさだった。37分、キーマンのヒメネス選手が那須選手を突破し、中央へ折り返す。森崎、トゥーリオ選手も間に合わず、追加点を許した。この圧倒的な攻撃力に小野選手も下がらなければならず、中盤のキープ力はますます落ち込んでしまった。せいぜい目的もなくロングボールを放り込むくらいの攻撃しかできず、前半は絶望的な時間が続いた。 後半 ヒメネス選手に勝ち目がなかった那須選手を下げ、松井選手を投入する。茂庭選手が那須選手に代わり、小野選手がボランチに下がり、司令塔に松井選手が入り、阿部選手がバックに下がるというこれまで練習してきたオプションを試してきた。ハーフタイムに山本監督に猛烈にしかられたこともあろう。後半は見違えるように中盤でのキープ力が高まり、日本が攻勢に転じることとなった。 徳永選手の突破など、早い時間に2点差に追いつこうとする意欲が伝わってきた。8分、高松選手がややシミュレーション気味ながらもPK獲得し、小野選手が再度決める。これで1点差となる。 これに対して、パラグアイは前半の中心人物ヒメネス選手を下げ、ディフェンダーを投入する。さらに17分、阿部選手のやや雑なスライディングタックルが避けられ、ミドル気味のシュートから追加点を獲得する。これでまた2点差となり、勝負あったかに見えた。 しかし日本はこの辺りから驚異的な粘りを見せる。小野選手がボランチに下がり、よりフリーでプレイできることによって日本の攻撃の幅が格段に広がった。そして森崎選手に代え田中選手を投入し、攻撃的な3-4-3に変更、山本監督が得点してこい、あきらめるな、というメッセージを送る。 パラグアイは積極的に強烈なミドルシュートを放ってくる。日本には打てないレベルだったが、GKの目の前に飛ぶなどやや不運もあった。守備では全員が引いて守り、逃げ切り態勢のようだ。 次第に日本がペースを握るようになり、大久保選手の裏への飛び出しや田中選手のドリブル突破など、前半には見られなかった勢いが伝わってくる。36分、田中選手が飛び出し、中央へクロス、大久保選手が冷静に左隅に押し込み、ついに1点差に追いつく。 その後、パラグアイはガス欠気味、最終ラインがスピードに翻弄され同点に追いつけるかと思われたがタイムアップとなった。 まとめ 前半を見て、4-0以上のスコアで敗れ、これで終わる(戦意喪失でグループリーグ敗退)かと思われたが、後半はボール支配率を高め、相手の息切れにも助けられ、何とか接戦を演じることが出来た。応援する立場から好意的にコメントすると、優勝候補相手に3得点という結果は、次の試合に生かせるはずである。 日本は多少の緊張もあったのかもしれないし、パラグアイが先手必勝で日本を完全に飲んでいたこともあっただろう。いずれにせよ、相対的に日本がスロースターターであり、序盤の失点で相手をリズムに乗せてしまったことは非常に悔やまれる。 前半、司令塔の小野選手が相手の早いパス回しのため下がらざるを得ず(本人は珍しくイラついていたようだった)、その結果中盤のスペースから日本の左サイドへ突破を狙われるという悪循環に陥った。早いパス回しとプレスで常に先手を奪うスタイル、まさに山本監督の理想とする戦い方をしたのはパラグアイだった。 しかし、日本は後半から尻上がりに調子を上げてきた。追いつこうとする日本の執念は見事であった。前半飛ばし気味でガス欠に陥りかけていたパラグアイとしては、この勢いだけは唯一の誤算だったのではないだろうか。終盤最終ラインが乱れたことは大きな突破口となった。そして、今夜の日本の最も大きな収穫は、フォワードのスピードはオリンピックの強豪相手でも充分通用することであろう。 パラグアイと日本の差は、アジアカップの日本とその他アジア勢という次元の違いがあったようだ。タフネス、展開力、フィジカル、スピード、チーム戦術、統率力、…ほとんど全てのスキルが優勝候補たるべく証明となった。追いつかれたら突き放すことができるという技術と自信は、相当の実力差がないと実行できないものである。簡単に言えば、パラグアイにはもう4人くらい小野がいた程の卓越したレベルだったように思う。序盤の日本のスロースターターを「たら、れば論」で考慮したとしても、失点が多くなったものの、初陣としては得点差以上の圧勝と言って良いだろう。 アジアカップの地味な戦い方に見慣れた私としては、パラグアイの気合いの充実した戦い方に虜にされそうになったものである。南米のチームらしく多少攻撃偏重気味な感じもするものの、日本を倒したチームとして、ぜひ決勝トーナメント進出を決め、良い結果を残せることを期待している。 この試合で小野選手の起用法(次の試合もボランチだろう)など実際の戦力として見極めがついたことは喜ばしい。しかしその一方で、日本代表の打ち尽くせる弾丸のほぼ全てをさらけ出してしまったことも否めない。残された攻撃のオプションは、せいぜい両サイドを石川、駒野に代えるくらいではないだろうか。今後日程的にオプションを増やすことは困難であるが、一方で日本に対する研究はますます厳しくなり、有効な手数はますます限られてくる。 もちろん、この敗北でグループリーグ突破が非常に厳しくなったのは言うまでもない。パラグアイが首位通過できる実力だとすれば、突破条件は残り2戦2勝の勝ち点6しかないだろう。もし1勝1分の勝ち点4の2位勝ち抜けがあり得るならば、総得点レベルで若干有利かもしれない。 とにかく、短期的にはこの結果を前向きに考え、自分たちは世界でも通用するが、今夜は運がなくて負けたのだと都合良く開き直りたい。この敗北が生かせるかどうか、全ては次のイタリア戦で明らかになる。 エジプト人のレフェリーはほぼ中立、競り合いの時にジャッジがあやふやになることも2度ほどあったが、総合的にはまず許容範囲であり、むしろ2度のPKなどを踏まえると日本に対してやや好意的だった感さえある。こう思ってしまうのも、アジアカップの劣悪なジャッジで毒されたせいだろうか。 なお、ピッチの芝が根付いていないのか、土壌がやわらかいのか、芝がいたるところでめくれ上がり、まるで月面のようになった。日本の選手は特に足を滑らせることが目立っていたため、次回はシューズを取り替えるなどの対策をしたい。 放送陣に対して 私の記憶する限り、フジテレビのワースト放送である。キャストにサッカーの素人(藤原紀香、吉田秀彦)を出演させ無意味なコメントをさせるなど、最近では他局でも滅多に見られないような質の悪さであった。永島昭浩氏は戦前のコメントで緊張のためか、あまりに噛みすぎで何を言っているかよくわからなかった。 オリンピック的な実況なのか野地俊二氏は地味に喋り雰囲気だけはあった。しかし、どちらがどれだけ押していて(無論前半は圧倒的なパラグアイペースだった)、なぜそうなるのかを長谷川健太氏はほとんど全く解説していない。長谷川氏は松木氏とレベル的に大差ない。ああいったコメント(応援とほぼ同義)が許されるのは、選手か、監督や関係者か、応援しているサポーターだけである。解説者としては何を視聴者が望んでいるのか全く意識しておらず、これで金をもらうのはプロとして詐欺行為に他ならない。初戦のために緊張するのは日本もパラグアイも同じである。序盤の硬さをやたらそのせいにするのは納得しかねる。まるでテレビ朝日を髣髴させるようなひどい実況陣だった。 また、やたらリプレイを流すあまり、実際のプレイを放送し損なうなど、私が一押しするフジテレビらしくない放送で残念であった。 採点の比較右の列の赤字部分は「サッカーマガジン」より引用しています。
この試合のMVPは該当者なし。技術的にこれだけの格差があり、長い時間一方的な試合展開だった内容の評価はやや難しい。強豪相手に臆することなく自分らしさをアピールした、ミスが少なかった選手を平均点以上とした。 曽ヶ端準GKについて、稀に見る6秒ルールでのミスは痛かった。3失点は責任を問うのも酷だが、他のプレイは安定しており、まだ改善の余地はありそうである。 ディフェンス陣について、茂庭選手は前半の左サイドに比べれば安定していた。後半左サイドに転向して守備は安定した。トゥーリオ選手は早い展開にやや翻弄されたか。セットプレーはオリンピックでも当たりそうだ。那須選手は先制点を許したこの日のA級戦犯だろうか。気持ちを切り替えて復帰して欲しい。 中盤について、両ウィングバックは特に前半は破壊力不足。森崎選手は攻めも守りも中途半端になってしまった。守備は致命傷になった。徳永選手は前半消える時間が長かった。両者後半は目覚めたようにプレイが変わったので、次の試合にこの反省を生かして欲しい。ボランチについて、阿部選手はどちらかというと静的な選手であり、運動量に欠け、素早い展開に遅れがちだった。今野選手はタイミングの良い上がりが向上してきた。オリンピックでもフル出場、活躍するだろう。小野選手は前半回りと噛み合わず多少ストレスフルな時間帯が多かったものの、後半フリーになると俄然攻撃の中心人物になり始めた。松井選手とのコンビで中盤のキープ力が著しく向上した。これで次の試合の戦術面が確立された。 高松選手は前半消え去り、後半決めて欲しいシーンを外したが、PKを取ったことは評価。パラグアイレベルの相手で消極的に待っているだけではまずボールがつながらないので、ワンタッチプレイなどで切り替えて欲しい。平山選手は投入された時間が短く、あまり目立てなかったものの、2本のヘディングシュートは自分の長所をよく理解しており、得点するならこのパターンだろう。大久保選手は影のMVPかもしれない。90分間がむしゃらな闘争心を見せ、うるささをアピールした。小兵のフォワードらしい裏への飛び出しなどはパラグアイを翻弄させた。田中選手もコンディション不良が伝えられていながら、自分らしいスピードを生かし、ゴールに対する執着心が良かった。スーパーサブとしても非常に面白い。 山本監督は、中盤にポジションを調整し、全てのカードを使い切り、1点差にまで追いつく執念を見せたことを評価。次の試合でこの敗北が糧になっていること(勝ち点3)を祈る。 |
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