2004年11月17日(水曜日/晴) W杯アジア一次予選

埼玉スタジアム

 日本代表 vs. シンガポール代表
(1-0)

得点
玉田(前半13分)

失点
なし

警告
加地(前半20分)
鈴木(後半36分)

レフェリー
イラン人

TBS
解説: 水沼貴史、柱谷哲二、実況:清水大輔

<日本代表メンバー>
GK:12 土肥洋一
DF:21 加地亮、5 宮本恒靖(C)、3 松田直樹、17 三浦淳宏
MF:4 遠藤保仁、6 中田浩二、8 小笠原満男→14 三都主アレサンドロ(後半35分)、
16 藤田俊哉→27 大久保嘉人(後半14分)
FW:19 本山雅志、28 玉田圭司→11 鈴木隆行(後半27分)

サブ:1 楢崎正剛、2 田中誠、22 中澤佑二、15 福西崇史

「ジーコジャパン振り出しに戻る」

展望
 W杯アジア一次予選最終試合、FIFAランキング17位(アジア最高位)の日本が、FIFAランキング118位のシンガポールをホームさいたまスタジアム に迎え撃つ。日本はすでに一次予選突破を決めており、この試合にどんな大差で勝とうと負けようと何も関係ない消化試合となった。その他アジアの強豪が苦戦する中、オプションを試すことができる事実上の調整試合を迎えることができたのは、素直に喜ばしいと言えよう。
 ジーコ監督もこの試合は不動の欧州組召集を見送り、日本代表功労者が出場するという話もあったが、AFCからも主力を出し惜しみすることないよう伝達があり、これまで控えに甘んじていた選手たち(一部主力は怪我などにより欠場濃厚)の活躍の場になりそうである。
 シンガポールと言えば、アウェイでの苦戦が記憶に新しい。筆者の考えによれば、シンガポール代表の実力は、今夜のB代表(A代表のサブ組)はもちろん、オリンピック代表、J1の単独チーム、J2の単独チーム、おそらくアジアユースのメンバーでも倒せるような相手であろう。技術、身体能力、精神力、あらゆる点においてシンガポールが勝る点は全くない。前回の辛勝は、シンガポールの気合いを考慮しても、日本側の準備不足によるために生じたと言えよう。
 その対策について、今回の合宿はおよそ1週間前の9日に始まり(13日、14日は天皇杯で中断)、15日に全員が揃うというスケジュールだった。内容として、本番形式の練習試合は帝京高校との対戦のみで、恒例のシュート練習などに重点を置いているようである。
予想スタメン

土肥
加地  宮本 松田 三浦
遠藤 中田
藤田  小笠原
本山 玉田
 戦前の情報によれば、国内組の必ずしもスタメンでないメンバーによるボックス型の4-4-2でやるようである。試合展開に応じて、3バックに移行する可能性もありそうだ。
 ジーコ監督の辞書には「消化試合」という言葉がないようで、いずれにせよ、日本の圧倒的な勝利は揺るがないし、ちょっとしたミスや不運を除けば、苦戦することも考えられない。早い時間に大差がつけば、スペインに移籍が決まった大久保選手や、その他出番がなかった選手にも出場のチャンスがあるだろう。約1週間の準備期間で控えのメンバーまで戦術が行き届いているか、これまで控えだったという彼らの奮起にも期待し、2004年の公式戦最終試合、5-0で日本 の勝利と予想する。
 
前半
 予想通りのスタメンで開始する。サブ組はこれまでの鬱憤を晴らすかのように、試合開始直後からよくパスが回り、大量得点を期待させる。彼らにはスロース ターターという言葉はないようだ。小笠原選手のシュート、三浦選手のロングシュート、本山選手のだふりシュートなど、ゴールに対する意識が非常に強い。
 そして前半13分、遠藤選手から本山選手がスルーパス、裏でもらった玉田選手が角度のないところからゴールを決める。シンガポールの高いラインの裏を狙うという攻撃は効果的だった。
 しかし、その後追加点が奪えない。20分過ぎあたりから、相手の実力を悟ったのか、極端に動きが停滞し始めた。セットプレーもいまいち精度を欠き、ダラダラした雰囲気でミスも目立った。サブ組に対するサポーターの焦燥感が募り、前半終了。

後半
 後半リズムを変えるべくメンバー交代があるかと思われたが、勝っているときにはメンバーをいじらないようで、前半のまま後半が再開する。さすがにジーコ監督に檄を飛ばされたと思われたが、悪い流れは変わっていない。
 立ち上がりが悪いというよりは、すでに息切れ状態の日本は、緩急のある攻撃がなく、ただ闇雲に前線に放り込むという小学生サッカーを見せた。1点差であればあきらめないのか、シンガポールは多少勢いを取り戻している。
 14分、藤田選手を下げ、大久保選手を投入する。フォワードの本山選手を藤田選手の位置に下げ、そこに大久保選手が入ったようだ。
 しかし、依然気だるい流れは変わらない。中盤の展開が全く面白くなく、全体の動きが停滞しているため、流動的なパスの出し所が著しく欠落している。相手 ディフェンスが最も厚い中央密集地帯に全体が突っ込んでいるようでは、さすがにどんなに優れたフォワードでも厳しいだろう。
 27分、玉田選手に代わり、やられキャラの鈴木選手を投入する。シュートをため、のらりくらりとプレイすることで相手ディフェンダーの餌食となり、ファールをもらうか、スペースを作るというマゾヒスト的、犠牲心溢れるプレイが期待されているのだろう。
 さらに35分、小笠原選手に代わりサントス選手を投入する。このボールをためる二人の投入により、シンガポールが釣られてスペースが生まれ、多少パスの 風通しが良くなった。しかし、ここまで引きずった重苦しい流れは変わることなく、運気を逃し、せっかくのチャンスもファインセーブなどで防がれてしまっ た。

まとめ
  はっきり言って約70分くらいはまさに消化試合という言葉がふさわしいような内容だった。刹那的な勝利、明日につながらない勝利だったように思う。賞賛す べきことは、得点するまでの時間帯と、モチベーションの維持しにくい試合においても、致命的なミス(細かいものはたくさんあった)を犯し自滅することな く、確実に最低限の仕事をこなしたということだけだ。
 日本代表2004年の戦いを振り返ると、不動のスタメンによる「大人の戦い方」が明らかな意図として達成できるようになったのは、数多くの実戦を経たこ こ最近のことである。チームの熟成のために要する時間を思うと、これまで控えのメンバーに同じような攻撃を期待するのはやや厳しかったかもしれない。
 今夜の日本イレブンは4バック仕様が急造だったためか、得点の後は右肩下がりに勢いを落とした。中盤の展開力が乏しく、直立不動気味になり、同じような リズムで縦に単調なパスを放り込み続けることが目立った。いかに格下のシンガポールにもこれでは通用するはずがない。前半ボールキープで攻撃の起点となっ ていた小笠原選手が後半に失速することで、シンガポールを中盤で下手に勢いづかせてしまったように感じた。
 ジーコ監督もシンガポールの盛り返しを察知し、結局は信頼のある不動のメンバー(鈴木、サントス)を投入せざるを得なかった(もっとも私は中盤をいじる べきだと思ったが)ように見えた。鈴木選手がのらりくらりとしたプレイで相手を引きつけスペースを作る(ファールを誘う)、サントス選手がドリブルでタメ を作るという攻撃など、いくつかの攻撃のイメージがより明確になれば、守備に走らずもっとエキサイティングな時間が続いたとは思う。これが「大人の勝利」 との紙一重の差なのかもしれない。
 中盤がこれだけ控えのメンバーに変わると、まるで互換性がなくなってしまうのは確かに仕方がないだろう。しかし、不動の控えメンバーはアピールすること を投げてしまったような、失敗を恐れずに挑戦する闘争心も得点するまでしか続かなかった。こんな姿勢ではブーイングが聞かれても止むを得ないだろう。飼い 殺しにしていたジーコ監督が責められるべきなのだろうか? 彼らは曲がりなりにも控えの立場を理解したプロなのだ。
 すでに予選敗退の決まっていたシンガポールは、間違いなく日本以上にベストを尽くしたと言えるだろう。MVPはファインセーブを連発したGKとする。序 盤の失点で崩壊することなく粘り強いディフェンスを続け、後半に日本の足が止まり始めてからも(やる気がなくなったか、試合に飽きたようにも感じた)、複 数人がかりでプレスをかけ続け、日本に消極的なバックパスや足下ショートパス、ミスを誘発させたことは驚嘆に値する。チャンピオンズ・リーグで個人技頼り のレアルをレバークーゼンが完璧に封じた戦術を彷彿させるものがあった。若きシンガポール代表の実力は日本に遠く及ばず、決定的なチャンスも後半の最後に 一度しかなかったが、チーム戦術を徹底し、見ていて清々しかったのはシンガポールであろう。

 イラン人のレフェリーは比較的頻繁に笛を吹き、イエローカードを出すべきだった(加地選手に対するエルボー)、藤田選手は明らかにペナルティエリア内で倒されたなどいくつか指摘したいが、概して安定した公平なジャッジだったと言えよう。

放送陣に対して
 水沼さんは相変わらず口数が控えめなものの、発言自体は試合の流れを的確に掴んでいたものであった。清水さんも水沼さんにもっと喋っているもらえるよう なアシストを意識していたように感じた。筆者個人的には、TBSの放送はフジテレビの次に好きだ。柱谷さんはいてもいなくてもどちらでも関係なかった。

採点の比較

右の列の赤字部分は「サッカーマガジン」より引用しています。


私の採点
サッカーマガジン
土肥洋一 6.5
6.0
加地亮
5.5
5.5
宮本恒靖
6.0
6.0
松田直樹
6.5
6.0
三浦淳宏
6.0
6.0
遠藤保仁
6.0
5.5
中田浩二
5.5
5.5
小笠原満男
6.0
4.5
→三都主アレサンドロ
-
-
藤田俊哉
5.5
5.0
→大久保嘉人
6.0
5.0
本山雅志
5.5
5.5
玉田圭司
6.5
6.0
→鈴木隆行
-
6.0
ジーコ
6.0
6.0
 
 無気力気味の勝利の採点は意見の割れそうなところだ。筆者は無気力振りを嫌い、積極的にオーバーラップを仕掛けなかったボランチと、攻撃のアイディアが 不足し、強引さもなかった中盤がこの停滞の原因と考えている。また、特に気迫の感じられなかった選手の評価を下げた。
 GK土肥選手の見せ場らしい見せ場は後半ロスタイムのファインセーブくらいだけだったが、それでも数少ないシーンでは万全の対応を見せた。GKの層はかなり厚い。
 加 地選手のつまらないミスが失点に結びつかなかったのは、シンガポールの未熟さにも助けられた。この日気分にムラがあった選手の一人。宮本選手はオーバー ラップをせず最後の砦として守備に残った。目立ちはしないが、最終ラインを良く統率した。松田選手はアグレッシブな守備に加え、消極的な中盤に業を煮やし たか、積極的にオーバーラップを仕掛けた。三浦選手は気負ったかブランクのためか、微妙なコンビネーションが噛み合わないこともあり、遠慮してしまうよう なシーンも見られた。ギリギリ及第点だが、年長者としてのリーダーシップにも期待したい。遠藤選手はパスの出し手としては効果的だった。一方の中田選手は シンガポールに引くよりは、走り屋として役割分担した方が良かったように思う。小笠原選手は前半6.5、後半5.5とした。後半の停滞した時にこそ、我を 発揮してチームを引っ張っていって欲しかった。チームと共に失速していては、あまりに優等生すぎる。サントス選手は出場時間が短すぎるため採点不能。あえ て採点すれば6.0。藤田選手は惜しい胸トラップや不運なPKなど、残念ながら周りと噛み合わず。
 大久保選手は得点しようという意気込みは感じられたが、一人の力ではさすがに厳しかった。本山選手は私が最も気になった選手だ。前半12分の立ち足 シュートなど、緊迫した雰囲気をぶち壊したような気がした。ミスをしてもへらへらしているのは気分が悪かった。玉田選手はファインセーブに阻まれるも、1 得点以上の活躍は及第点以上。鈴木選手をあえて採点すれば6.0。あのファールを誘うようなもたついた動きにイライラさせられることもあるが、筆者は最近 魅了されつつある。
 ジーコ監督について、今夜も最低限勝利し、一次予選を全勝で終えたことを評価したい。今後の課題も少なくないが、時間をかけて成熟していくと期待している。


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