「噛ませ犬に大勝し、らしさをアピール」
展望 ジーコジャパン(FIFAランキング19位)2005年の記念すべき初陣である。相手はFIFAランキング149位のカザフスタンである。インターネットを調べる限り、残念ながら彼らの情報はほぼ皆無であった。しかし、この相手は勝つことを前提とした噛ませ犬以外の何物でもない。この試合の目的は、最終予選の初戦、北朝鮮戦に勝つための実戦練習に他ならない。本番でやるべきことをメンバーが認識し、それがどれくらい機能するのか、周囲とのコンビネーションなどを確かめる試合である。 最近の日本代表の合宿をインターネットやテレビで調べる限りは、休み明けのブランクを感じさせないような、選手全体の意識も高く、チームの雰囲気も良好な様子に見える。練習内容も恒例のシュート練習ばかりではなく、練習試合2戦、さらには珍しいとも思える戦術練習などにも手を出せるほどのコンディションは整っているようである。 ここに2005年の日本代表の新たな一面があるようにも思える。2004年の最も大きな収穫の一つは、90分間を通じた長期的なヴィジョンを持った、大人の戦い方ができるようになったことである。そして、攻撃の中心人物を徹底的にマークすることで、相手の長所を消し、相手の戦意を喪失させてしまうような戦い方を習得した。どちらかというとやや守備的、イタリアの1-0で勝つサッカーを髣髴させるものがある。 しかし、2005年のジーコジャパンはそれだけではなく、自らの攻撃パターンに相手をはめることで相手の良さを封じ込めるというより能動的、よりスペクタクルな戦術を習得しているように感じる。確かにアジア一次予選のレベルでは、1つか2つの重要な攻撃手段を消すだけで戦闘意欲が萎えてしまい、事実上ギブアップするようなチームが多かった。しかし、最終予選の強豪チーム対策として、自分たちのやりたいサッカーをやることで相手のサッカーをやらせないことも必要になってくるはずだ。 筆者の主観によれば、北朝鮮はこのグループで最も格下であり、日本代表2004年仕様でも十分に太刀打ちできるはずである。おそらく、2005年仕様を北朝鮮戦で実践することで、最終予選のより確実な突破を狙っているのではないだろうか。2004年の地味な戦い方、不動のスタメンなどそれらは育成のための時間であって、今年はついに華やかな攻撃が開花することを期待している。 予想スタメン 今夜の試合は厳しい練習によって疲労もピーク時に近いことから、数割引きのコンディションと予想される。また、次なるヴィジョンを定めただけで突然チームが強くなるわけではない。そのような戦術を本番で使えるようにするためにも、今夜の親善試合があるわけだ。従って、多少のちぐはぐさも見られる可能性はある。 注目の選手は、司令塔の小笠原選手である。個人的にはチキン振りがせっかくの才能を封じているという気がしてあまり好きではないが、さすがにカザフスタン戦相手には試合のリズムをコントロールし、自分を表現できるだろう。彼に使われる人間として、両サイドの加地、三都主選手のオーバーラップにも期待したい。 選手交代は6人までということで、後半は期待のフォワード大黒選手なども投入されることだろう。 カザフスタンがどれだけ本気なのか全くわからないが、北朝鮮戦本番も国内組中心となることから、少なくとも日本だけはアグレッシブな試合(ガチガチ)をするだろう。この試合、日本の3−0(得点者は、小笠原、玉田、大黒)と予想する。 前半 カザフスタンはきちんとやる気のあるチームで、きちんとプレスをしかけてくる。ただし、せいぜいハーフウェイラインあたりまでで自陣にしっかりと引いているようである。特にゴール前の密集は最近では当たり前となりつつある日本対策であろうか。 一方の日本は、立ち上がりが不安視されるが、2005年仕様は試合開始からアグレッシブである。5分、加地選手のクロスのこぼれ球を小笠原選手がシュートを打たずに前方に放り込む。それを玉田選手が冷静に決め、序盤から幸先の良いゴールであった。さらに11分、サントスのCKを走りこんだ松田選手が押し込みゴール。早い時間帯で2点差をつける。これがほぼカザフスタンの致命傷となった。 カザフスタンは単に実力がないのか、それとも強行日程や時差による影響なのか、プレーの精度が著しく悪く、セットプレー対策もままならず、つまらないミスも少なくなかった。前半の目ぼしい攻撃は、無目的に前方に何度か放り込むくらいだっただろうか。せっかくのFKも全てあさっての方向に飛んでいってしまった。 24分、サントス選手のFKが競り合った選手のためキーパーの死角となり、誰も触らずゴールとなる。あまりお目にかかれないゴールだった。それ以降も日本のボール支配は続き、10代の下部チームにレッスンをしてやるような余裕すらあった。 小笠原選手のセットプレーから良いコンビネーションもあったが、残念ながら奇跡のファインセーブ(飛んだ場所が悪かった)に助けられ、ゴールならず。前半は一方的な試合展開、大差で終わる。 後半 後半開始から、五輪代表生え抜きの阿部選手が投入される。福西選手は機能していただけに、新たなオプションを試したいとのことだろう。早速FKのチャンスをもらうがこれはキーパーの紛れもないファインセーブに救われる。 10分〜15分の間、中盤からカザフスタンがロングボールを放り込めるようになり(中盤のプレスのタイミングがずれたように思う)、唯一と言えるほどの決定的シーンは、カザフスタンの未熟さにも救われた。 そんな嫌な流れも小笠原選手が技ありのスルーパスで、玉田選手が裏へ走りこみ、ゴールを演出する。これで文句なくゲームオーバー。後はどれだけオプションを試せるか、と思われた。 選手交代がやや遅れ、期待の大黒選手の投入は30分となる。日本のボール支配は変わらず、試合終了直前にも、何を思ったか一挙3人もの交代があった。彼らが活躍するためにも、20分あたりの大量交代でも遅くなかっただろう。 まとめ カザフスタンは直前来日ということもあってか、ここ最近で最も格差のあるチームの一つのようだった。わざわざ来日してボコボコにされたことには感謝の気持ちというか、お気の毒にさえ感じた。日本に勝る要素は何一つなく、J2の単独チームにさえ実力は及ばないと思われた。 今夜の試合は、はっきり言って、合宿中の練習試合とどれだけ本格さが違うのか、あまりの実力差ゆえに、何とも評価しがたい。しかし、まずは日本代表が年明けの厳しい練習を経て、コンディションの不良やブランクを感じさせず、自分たちのやりたい試合を実現し、文句のない大勝によって一息つけたことは素直に喜ばしい。純国内組でもアジア王者の風格すら漂う横綱試合だった。 明らかな格下であるからこそ可能だったプレイということを前提にして、全体を通じてパスワークが機能し、両サイドが落ち着いて攻撃参加し、ボランチが相手の攻撃をよく読み、フォワードにもよくボールがつながった。 筆者が試合前に言及した次なるステップとしては、あまりの実力差ゆえに正直コメントしがたい。ただし、さまざまな攻撃を試みようという意識はあったようで、それが今後に向けてよりアグレッシブになることを期待している。 もちろん最終予選に求められるレベルはこんなものではないが、初陣としては無難なスタートだった。 放送陣に対して 初めてサッカーを見るような人でも、日本が圧倒的に優勢に見えたのは疑いないだろう。特に解説(私のレポートも含む)が必要とされた内容ではない。テレビ朝日に期待することはないが、放送の質としてはごく普通だった。 採点の比較右の列の赤字部分は「サッカーマガジン」より引用しています。
これだけ実力差があると悪い選手を探す方が難しい。全体的に一人一人が自分らしさをアピールし、勝利に貢献できたことは事実である。今夜のMVPは2得点の玉田選手である。今夜は得点できるという自信に満ち溢れていた。2点目などはらしさをアピールできた。 川口GKは数少ないピンチにも動じず、安定したプレイを見せた。 ディフェンダー陣は全員が及第点。1回ほど気を抜いたが、カザフスタンの動きをほぼ完璧に読み、抑えることが出来た。また、タイミング良いオーバーラップや、セットプレーに絡むなど、攻撃に参加する余裕もあった。得点した松田選手をやや高評価とした。 中盤もここ最近で最も出来が良かった。ボランチは周囲との連係で相手をはさみ、ボールを取るタイミングが良かった。遠藤選手は攻撃の切り替えとしてのパス供給が効果的だった。福西選手は得点こそならなかったが、セットプレーに強く、よく相手を読むことでアピールになった。両サイドも余裕があり、積極的なオーバーラップが多彩な攻撃となった。加地選手はトラップが課題だ。サントス選手は準MVP候補。今夜はセットプレーが冴えた(カザフスタンがセットプレーにもろすぎた?)。小笠原選手はゴール前での決定的なパス(アシスト)が機能した。準MVP候補でもある。今後は自らも積極的にミドルシュートを放つことで、より驚異的な司令塔として機能して欲しい。阿部選手はやや消極的に待ちすぎた、あるいは仕掛けるタイミングがずれていたように見えた。主な見せ場はフリーキックのみ、A代表デビューということで多少緊張してしまったのだろうか。 フォワードも及第点以上である。鈴木選手はピンチになってこそ得点する男のような気がする。相変わらずファールをもらうことで、間接的なアシストを供給し、らしさをアピールした。大黒選手は出場時間がやや短かったが、どことなくフォワードらしい良い意味でのふてぶてしさがあった。特に気負うシーンなどもなく、シリア戦の出場と得点が期待できる。 ジーコ監督は、この年明けの調整が絶対に間違っていないこと、順調にチームを運営していることを証明できた。ただし、相手が相手ゆえにそれ以上の評価は難しい。 |
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