2005年2月2日(水曜日/晴)キリンチャレンジカップ2005

埼玉スタジアム2002

 日本代表 vs. シリア代表
(3-0)

得点
鈴木(前半44分)
宮本(後半24分)
小笠原(後半45分)

失点
なし

警告
遠藤(前半10分)
加地(前半46分)

レフェリー
シンガポール人(シャムスル・マイディン)、シンガポール人、韓国人

TBS
解説:金田喜稔、水沼貴史 ピッチ解説:高木琢也 実況:土井敏之

<日本代表メンバー>
GK:23 川口能活
DF:2 田中誠→19 本山雅志(後半36分)、5 宮本恒靖(Cap)、22 中澤佑二
MF:21 加地亮、4 遠藤保仁→6 中田浩二(後半26分)、
15 福西崇史、14 三都主アレサンドロ、8 小笠原満男
FW:11 鈴木隆行、28 玉田圭司

サブ:1 楢崎正剛、12 土肥洋一、17 三浦淳宏、25 茶野隆行、
24 西紀寛、3 松田直樹、26 坪井慶介、16 藤田俊哉、30 阿部勇樹、31 大黒将志

「ストレスフルな勝利」

展望
 北朝鮮戦に向けたラストマッチ、相手はFIFAランキング85位、中東のシリアである。ランキング的にほぼ同じ程度の強さと思われるのが、タイ(80位)、UAE(83位)だ。カザフスタン戦と同じく、格下相手の調整試合ということで、相手の情報は乏しい。シリアの来日メンバーは若手が多く、新監督に率いられてからまだ一ヶ月と日が浅く、始動してからまだ2週間とのことである。その間の練習試合でクウェート(55位)に2-3で敗れているという。参考までに、一次予選ではグループ6の2位で予選敗退、バーレーンには1分1敗とのことだ。
 この試合の意義はバーレーン(中東)対策とのことらしいが、休みボケもありそうな急造チームがどれだけ実戦に近い試合がこなせるかはやや疑問が残る。それはともかく、日本代表はサポーターのためにもこの練習試合でできなかったことは、公式戦でもできそうにないくらいの心意気で試合に臨んでほしい。
 先日のカザフスタン戦は、細かいミスはあるにせよ、著しい実力差にも助けられ、休み明けの試合ながらやりたいことはほぼできたと言えよう。あの試合が自信となって、この試合でもより華やかな攻撃に期待したい。
予想スタメン

川口
田中 宮本 中澤
  遠藤 福西
加地    三都主
小笠原
  鈴木 玉田
 試合前日のジーコ監督のコメントによれば、センターバックの松田選手に代わり、宮本選手が入る以外はカザフスタン戦と同じスタメンということだ。
 メンバー的にも、戦術的にもカザフスタン戦からの大きな変更点というものはない。疲労がたまっていること、自分たちのサッカーをやることで相手のサッカーを封じ込めることなど、より強いと思われる相手に対してやるべきことは同じである。アジアで相手がいなくなりつつある日本代表は、シリア相手に手堅くセコイ試合をするよりも、新たな攻撃の手段に挑戦するべきだ。
 注目の選手は、繰り返すが小笠原選手である。パスの繋ぎ役として小さくまとまってしまうのではなく、ミドルシュートやワンツーの起点となることで、相手ディフェンスに脅威を与えたい。また、ボランチのタイミング良い飛び出しや、ミドルシュートなども欲しい。得意のセットプレーでのゴールが濃厚であるからこそ、流れの中の得点に注目している。
 選手交代も同様に6人までということだが、北朝鮮戦に向けた実戦のため、もしかすると選手交代は少なくなるかもしれない。筆者個人としては、大黒選手に期待している。
 シリアの実力はともかく、少なくともカザフスタン戦以上のパフォーマンスは見たい。北朝鮮戦は、下手に欧州組を入れなくとも、国内組中心でも僅差であれ十分勝てるはずだと言わしめたい(筆者はそう考えている)。この試合、期待も込めて4−0(小笠原、玉田、大黒、鈴木)と予想する。

前半
 日本は落ち着いた立ち上がり、一方のシリアは非常にアグレッシブで、予想以上にプレスが早く、かなりの真剣モードのようだ。ただし、気合いはあるがそれほど技術はないようで、ややボールがおぼつかないように見える。序盤からサイド攻撃が目立つ日本、一方のシリアは縦に強く決定機を演出するも、決めきる力量は欠けている。
 サントス選手がクロスボールを放り込み、執念深くサイドアタックを繰り返すという展開が目立つ。
 10分、サントス選手が左サイドからスルーパスを切り込み、遠藤選手が走りこんでもらう。キーパーと接触し、PKかと思われたが逆にシミュレーションの判定とされ、イエローカードをもらう。これはややお気の毒なジャッジだった。
 日本は疲労がたまっているのか、運動量が少なく、油断があるのか、つまらないミスでピンチを招いてしまう。宮本選手が珍しく突破されペナルティエリアに侵入され、田中選手がオーバーラップの際にボールを失いカウンターを食らうシーンなどが危なかった。幸い、相手がミスに付け入るだけの技術はなく、シュートを打てたとしても枠内に飛んでくることは滅多になかった。
 日本は良くも悪くもマイペース振りで、サイドアタックを重視して粘り強くやろうという意図があるようだ。ただし、効果的なものは22分などに代表されるようなスピードに乗った早い展開に限られてしまう。サイドを起点とした様々な展開を試みるならば、もっと緩急やリズムを変えたパターンを試みても良かっただろう。中盤、特に中央でのシリアのプレスはかなり厳しく、消極的な逃げの意味でのサイド攻撃だったのだろうか。
 シリアは攻撃力がなく、日本は攻め手に欠くというか同じような攻撃ばかり繰り返すという時間帯が続く。
 予想外の苦戦は長引くが、44分、両サイドのクロスによる揺さぶりからサントス選手の効果的なクロスが鈴木選手にどんぴしゃにはまり、ついにゴールする。もっと遠い位置からでもシュートすればもっと得点できたと思われ、前半は終わる。
 
後半
 プレスにはまっている小笠原選手を交代させるべきだと筆者は考えていたが、メンバー交代は全くなし。シリアのスタミナ切れと日本の後半での盛り上がりを考えてのことだろうか。
 しかし、開始数分してからすでに弾切れ気味になった。日本は立ち上がりを手堅くこなす作戦なのか、攻撃のフォローもやや遅れている。
 試合の流れを決定付けたのが16分、2枚目のイエローカードでシリアの11番が退場する。これでシリアは心が折れてしまい、プレスする気力が萎えてしまったようだった。日本はこれで気持ちを落ち着かせ、攻撃の余裕ができるようになった。
 遠藤選手のミドル、宮本選手のオーバーラップ、鈴木選手のボレーなど、もう少し練習が必要だが挑戦自体はかなり面白い。そして24分、サントス選手のクロスがこぼれたところを遠藤選手が折り返しクロス、真ん中で宮本選手がヘッドでゴールする。これで事実上の終戦となった。
 遠藤選手を下げ、ジーココネクションで中田浩二選手を投入する。彼はやや移動の疲れがあったか。シリアはペナルティエリアからシュートするも川口選手のセーブに阻まれた。
 さらに36分、田中選手を下げ、ジーココネクションで本山選手を投入する。4−4−2へのシフトかと思われた。格下のシリアにはこのシステム変更が効果的だったようで、マークが絞れず、小笠原選手がフリーでボールをもらえるようになった。こうなると、日本のペースは止まらない。
 日本のシュートはやや精度が欠けることもあったが、試合終了間際、サントス選手のクロスを鈴木選手がスルーして、小笠原選手がシュート、アピールの3点目を決めた。

まとめ
 3-0という結果に文句はないが、予想以上に苦戦し、見ている方も正直疲れてしまった。最後の最後までであきらめず得点したことは喜ばしい。しかし、勝って当然の相手に対してこの内容では、本番は本当に大丈夫なのかという印象である。
 まず、疲労がピークに近い状態なのか、カザフスタン戦に比べて、アジアカップを髣髴されるように運動量が著しく劣っていたように見えた。とりわけ前半において、味方のフォローが遅れることでパスコースを限定され(あるいは失い)、孤立したところを複数人に囲まれボールを奪われるというケースが異常に多かった。好守が切り替わり、せっかくボールをキープした矢先にリズムを崩すことで、見ていてストレスがたまるものがあった。
 得点シーンは全てサイドからのクロスボールだった。全体を通じてサイドアタックが目立っていたが、得点したものはその中でも特に精度の良かったもの、仕掛けが面白かったものなどだけで、打率はかなり低い。引いた相手に対しても強引で単調なサイドアタックを執拗に繰り返し、能率が悪いというか、他に攻撃の手段がないのかと思われた。相手が未熟なシリアだったから良かったものの、こぼれ球を拾われ効率的にカウンターアタックを狙われれば、日本は攻撃の手数が激減していたかもしれない。
 単純なフィジカル勝負では、頑強な肉体を持つシリアに分があったようだ。確かに日本はシリアに比べ技量は上である。ただし、厳しいプレスをされると途端に弱気になり、本来の力量を発揮できず、極端に消極的になってしまう弱点を露呈した。特に中央の選手はその傾向が見られた。相手のプレスが気になり、ボールを受けた方にただ単純に返すだけでは、展開力が乏しく、簡単に相手に読まれてしまう。特にシリアの勢いがあった前半は、ボールの落ち着くポジションがなく、予想外の苦戦を強いられた。そういった相手を想定したからこそ、逆サイドへの展開、早いワンツー、豊富なパスコースで的を絞らせないなどの作戦が必要だったのではないか。あるいは、個人技でかわすか、フィジカルで勝負しても良かったのだ。
 また、最も気になったのが、シュート練習が恒例となっている割には、ペナルティ・エリア内に入らないとシュートを打たないことだ。中東勢、おそらく北朝鮮も遠い距離から苦し紛れでもスペースがあればガンガン積極的に打ってくる。今後の強豪相手では、シュートレンジはますます広がってくることを想定した方が良い。昨年12月のドイツ戦が良い例だ。日本のシュートレンジの意識は、攻守両方において随分狭い印象を受ける。
 繰り返すが、相手がシリアだったからこそ勝てたようなものだ。前半の未熟さと、後半の失速に大きく助けられた。この内容で来週が本番だと考えれば、この勝利に喜べるはずがないだろう。

 本日のレフェリーは、遠藤選手に対するシミュレーションの警告を除けば、ごく標準的なジャッジだった。
 若きシリア代表は、日本代表に臆することなく自分たちらしさをアピールし、真剣勝負を挑んだ。実り多き敗北となっただろう。彼らの勇気に敬意を表したい。

放送陣に対して
 親善試合ということもあってか、放送全体的にお気楽な雰囲気が漂っていた。おそらく放送陣も予想していなかった苦戦だったのではないだろうか。そのショックで、実況が現実を見られなくなってしまったことはお気の毒に思う。それに振り回されてしまったのか、サッカー識者のコメントもイマイチ冴えなくなってしまったことは非常に残念だ。
 なお、実況が前半44分の得点を「良い時間帯」と表現した。私は全くそう思わない。ハーフタイムで相手も気持ちをリセットすることが可能であり、私の統計によれば、2点目を早く取った方が勝つような気がする。リードする側でも後半の立ち上がりに失点してしまうと、そのままズルズルと流れを戻せないこともあるものだ。サッカーはバラエティ番組ではないのだから、実況陣は常に正確な言葉を選んで欲しいものだ。
 ただし、TBSの日本代表をはじめサッカーを応援していこうという姿勢は素晴らしい。試合開始前の煽り番組は良くできており(北朝鮮の非公開試合をよく撮れたものだ)、サッカー初心者にもとっつきやすいよう適切な情報を与えている。「絶対に〜」と視聴者を洗脳するかのように煽るテレビ朝日も、彼らをよく見習うといい。


採点の比較

右の列の赤字部分は「サッカーマガジン」より引用しています。


私の採点
サッカーマガジン
川口能活 6.5
6.5
田中誠
5.5
5.5
→本山雅志
-
-
宮本恒靖
6.0
6.5
中澤佑二
6.0
6.0
加地亮
5.5
6.5
遠藤保仁 6.5
6.5
→中田浩二
6.0
5.5
福西崇史
5.5
6.0
三都主アレサンドロ
6.5
7.0
小笠原満男
6.0
6.5
鈴木隆行
6.5
7.0
玉田圭司
6.0
6.0
ジーコ
5.5
6.5
試合の総評
5.5
-

 本日のMVPは難しい。準MVPならば、サントス、鈴木あたりだろうか。
 川口GKは枠に飛んでくるシュート自体が少なかったが、非常に安定しており、守護神らしさを感じさせる。
 守備陣について、どちらかというと攻撃参加が目立つような内容だった。田中選手は攻守で周りとのコンビが合わないときがあり、彼だけの責任ではないにしろ、まだ簡単にボールをキープすべき場所でボールを失ってしまった。守備で及第点は中澤選手のみ。宮本選手は負傷の影響があるのか、飛び出すタイミングが悪く、ペナルティエリアに入り込まれるという決定的なミスを犯した。しかし、攻撃参加でそれをカバーした。中沢選手は攻守ともに無難に活躍した。十分及第点。守備陣の攻撃は頼もしいが、今夜のような動きの停滞した試合では、ボールを取られやすいため、ややリスキーかと思われる。
 中盤について、前半の苦戦の原因に他ならない。加地選手は厳しいプレスに苦しみ、クロスの精度がカザフスタン戦や左サイドに比べると、良かったとは言い難い。遠藤選手は唯一と断言できるほどミドルシュートを放った。破壊力はなかったものの、攻撃のリズムを変えるような多彩なパスで貢献した。私の好むボランチの働きである。中田選手は相手の失速後の出場ということもあり、飛び出しなど攻撃参加が効いた。福西選手はカザフスタン戦途中交代の影響があるのか、運動量に乏しく、攻守の切替時に何度かボールを奪われた。セットプレー参加は先日と同様有効だったが、リズムを崩したことは否めない。サントス選手はプレスに対してフェイントを入れるなど工夫して、より自分のやりやすいように、相手にとってより対応しにくいような努力が見られ、効果的なクロスを供給した。小笠原選手は、最後に得点していなければA級戦犯だった。最もプレスが効いていた選手で、ボールをキープし、ゲームをコントロールすることができなかった。後半の相手の失速に助けられたが、前半のうちにどうにかできないようでは、せっかくのテクニックも全く役に立たない。彼のテクニックで十分プレスをかわすことはできるのだが。
 フォワードについて、鈴木選手はプレスが厳しいほど生きてくる。ただし、シュートを打てるべきチャンスはもっとあったはずだ。玉田選手はフォローが少ないせいで孤立気味になり、結果的に孤軍奮闘することになった。しかし、それでも自力で何とかしようという意図が見られた。遠い位置からでもシュートを狙って欲しい。本山選手は幸運もあり、あえて採点すれば6.0である。
 ジーコ監督は、北朝鮮戦をこのメンバーを中心として向かえるためか、交代が遅かった(鹿島コネクションが目立った)。内容を考えると、プレス対策とシュートレンジなど、課題は少なくない。この試合は運動量が少なく、サイドアタックを多用したことから正直単調に見えた。北朝鮮戦最後のテストマッチということを考え、やや辛口に評価した。
 中村、稲本、高原ら欧州組はぜひ呼ぶべきだろう。フォワードは途中交代も多いが、中盤がこれでは、北朝鮮のプレスにはまる可能性がある。


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