2005年2月9日(水曜日/曇) W杯アジア地区最終予選

埼玉スタジアム2002

 日本代表 vs. 北朝鮮代表
(2-1)

得点
小笠原(前半4分)
大黒(後半46分)

失点
南成哲(後半16分)

警告
田中(後半6分)
三都主(後半44分)

レフェリー
サウジアラビア人(アルガムディ)ら

テレビ朝日
実況:角澤照治 解説:松木安太郎 ピッチ解説:堀池巧


<日本代表メンバー>
GK:23 川口能活
DF:2 田中誠→10 中村俊輔(後半21分)、5 宮本恒靖(Cap)、22 中澤佑二
MF:21 加地亮、4 遠藤保仁、15 福西崇史、14 三都主アレサンドロ、8 小笠原満男
FW:11 鈴木隆行→20 高原直泰(後半19分)、28 玉田圭司→31 大黒将志(後半34分)

サブ:1 楢崎正剛、17 三浦淳宏、6 中田浩二、16 藤田俊哉

「国内組の弱点を露呈 大人の戦い方2004の終わり」

展望
 ついに本番、ワールドカップの最終予選の初戦である。相手はFIFAランキング97位の北朝鮮(日本は19位)、会場はサッカー専用スタジアム埼玉スタジアム2002である。
 まず、この最終リーグのレギュレーションを確認しておこう。ワールドカップ出場枠はアジアにおいて4.5枠であり、このGLで2位以上であれば自動的に出場が決まる。3位になれば、もうひとつのリーグの3位とプレーオフ決定戦を行い、さらに北中米カリブ海エリアとの決定戦に望むことになる。
 このリーグの突破条件は、悲観的に勝ち点10(3W2L1D)、楽観的に勝ち点14(4W2D)と予想する。最悪でもホームで全勝すれば、プレーオフ進出は濃厚である。
 2005年の日本代表は1月下旬から始動し、ウズベキスタン、シリアとの調整試合を順調にこなしてきた。筆者のテレビ観戦とインターネットの情報収集によれば、北朝鮮を倒す準備は十分整っているはずである。おそらく、この試合にピークを持ってくることもできているだろう。ジーコ監督はその勢いを考慮したのか、今夜のメンバーは異例とも思える純国内組となるそうだ。
 対する北朝鮮については、サッカーについては原則非公開、サッカー以外の話題はメディアの格好のネタとなり、基本的には謎のチームである。ただし、筆者の推測(最近の北朝鮮の試合を見たことはない)によれば、実力的には当然シリアにも劣るだろうし、J2の単独チームでも勝てる、高校選手権に毛が生えた程度の力量であろう。立ち上がりが難しいとされる初戦がイージーな相手で、何より喜ばしいとさえ思う。
 彼らの特徴を復習しておこう。北朝鮮ではサッカーが国技とされ、国を挙げてサッカーの育成に力を入れている。軍隊関係の選手が多いが(彼らはサッカーエリートとされる)、軍の活動は免除され、事実上北朝鮮のプロサッカー選手として活躍しているそうだ。運動量に豊富で、非常に良く調練されているようだ。得意とする(というか、軍人の硬い頭ではそれしかないだろうと思われる)攻撃は、カウンターアタックである。といったところだろうか。
 しかし、どんなに悲観的に考えても、彼らがアジア王者を倒すことは難しい。日本はすでにその対策も練っているはずだ。唯一北朝鮮が勝っている要素があるとすれば、それは朝鮮半島人特有の日本戦になると120%以上の実力を発揮する精神力である。しかし、国際試合の経験に乏しい彼らは、5万人の日本人サポーターの大ブーイングによって多少なりとも萎縮してしまう可能性が高い。また、日本に先制されればそこから追いつくことも難しいし、引き分けに持ち込むだけのずる賢さも試合運びの上手さもない。
 北朝鮮がメディア規制を強いているのは、単に日本の報道陣によって彼らの情報統制が維持できなくなるというチキン振りであろう。彼らはマスコミに騒ぎ立てられ、「実は弱小チーム」と呼ばれることで、戦う前から自信を失うことを恐れているのではないだろうか。北朝鮮は新興宗教団体と同じくテレビネタとしては秀逸であるかもしれないが、この試合で敗れ、マスコミに作られた化けの皮がはがれれば、もうテレビネタとしての価値も失うはずだ。
予想スタメン

川口
田中 宮本 中澤
  遠藤 福西
加地    三都主
小笠原
  鈴木 玉田
 スタメンは、海外組(中村、高原)を召集したにもかかわらず、シリア戦とまったく同じ国内組だという。徹底して引いた相手に対しては、執拗なサイドアタックで崩すのだろう。セットプレーでも得点できるはずだ。これまでやれてきたことを出すだけで、間違いなく大勝できる相手である。この試合に全てを集中させてきた選手のパフォーマンスに期待したい。
 注目の選手は小笠原選手である。ポジション的に北朝鮮のプレスが厳しくなるだろうが、それをスイスイとすかしてペースを握りたい。仮に立ち上がりに失敗することがあったとしても、彼がリズムを作り、勝利に貢献することでスタメンのアピールとなろう。
 どの試合でもそうだが、北朝鮮に反撃の力量がないことを考えても、早い時間帯での先取点が欲しい。より早い得点がより早くゲームを終わらせるだろう。日本がアジア王者として弱小国にレッスンをしてやる、という試合に期待している。少なくとも、気合いで押されてはならない。この試合、4-0で日本の勝利と予想する(得点者は小笠原、鈴木、玉田、セットプレー関連)。
 余談ではあるが、北朝鮮側に危害を加えたり、悲惨な事故が起こると、アウェイでの北朝鮮戦に報復行為が及ぶ可能性があると考えられる。サッカーで盛り上がるのは何ら問題はないが、王者のサポーターとして風格を漂わせたいものである。また、北朝鮮の一部の政治家は憎むべき相手とはいえ、選手たちは普通の朝鮮半島人の気質を持ち、きっと純粋に戦ってくるはずだ。この試合が日朝友好関係を築くきっかけになれば、と強く願っている。

前半
 立ち上がりから両者とも勢いが感じられ、これぞワールドカップ予選という白熱した90分間を予想させる。ただし、北朝鮮のキーパーのゴールキックが普通では考えられない場所に飛んでいってしまったのは、小学生サッカーを思い出させた。
 4分、サントス選手がドリブルで突破を図ろうとしたところ、ペナルティエリア手前で倒され、良いFKを得る。キッカーは小笠原選手、やや小柄な北朝鮮の壁をこえ、下手なキーパーも反応できず、日本らしい幸先の良い先制ゴールを決める。その後も鈴木選手のパスから玉田選手の枠内シュートなど、日本の立ち上がりは好調のようだ。
 しかし、北朝鮮は序盤の失点で崩れるようなチームではなかった。パスワークが非常に優れており、スピードに乗ってワンタッチでボールを回す力量があるとは、筆者も全く予想していなかった。さらに、ミドルシュートも枠に飛んできた。日本はこの勢いに飲まれたか、それとも早くも逃げ切り体制に入ったか、得意の大人の戦い方をはじめた。
 しかし、北朝鮮は相当日本代表を研究してきたようで、豊富な運動量と有機的な動きで中盤を制することで、日本のパスコースを限定し、読みやすいパスばかりを出させた。日本の攻撃はあまりに正直すぎるというか、攻撃としては面白みのない展開ばかりで、組織立った北朝鮮の前にはお粗末過ぎた。なぜ相手の意識が向いている正面ばかりのパスで、相手の意表をつく逆サイドやワンタッチプレイなどの展開ができないのか、正直理解に苦しむものがあった。
 次第に日本は自滅気味に失速していった。特に消極的なバックパスやサイドへの逃げるようなパスは、いかにボールを失わないためとはいえ、相手の勢いを加速させるように思えた。中盤でプレスが追いつかないシーンも見られ、最終ラインも後手に回りつつあった。また、北朝鮮はアジア離れしているようにフィジカルコンタクトを恐れず、日本に対して厳しいチャージを食らわせていた。フィジカルに劣るチームがこれだけ接触プレイで分があるということは、よっぽどスピードがあり気合いが充実しており、対する日本があまりに軟弱だったということだろうか。この肉弾戦に、日本は随分苦戦させられた。
 北朝鮮はここ最近好調だったサイドアタックを2枚がかりで蓋をして、上手く防いでいた。攻撃では、複数タッチで逆サイドやスペースに展開し、攻撃の厚みとしても日本以上に勢いにのっていた。
 41分に遠藤選手のサイドへの展開からサントス選手へのシュートなどは面白かったが、これだけでは流れを変えるほどにはならず、何とか耐える時間を守りきって前半を終える。

後半
 前半の北朝鮮の猛攻を考えれば、選手交代で中盤の安定化を狙うかと思われたが、リードしていることから前半のまま逃げ切ろうという作戦だろうか。
 日本はサントス選手が起点となり、左サイドからの攻撃が多い。一方の北朝鮮は、ハーフタイムで鋭気を養い、発破をかけられたようで、スタートダッシュの勢いに分があり、多くのこぼれ球を拾うことができる。
 16分、北朝鮮はワンタッチプレーで日本をかく乱し、左サイドをオーバーラップしてきたサイドバックがどフリーで川口GKも予測できないスーパーシュートを決める。これは北朝鮮側サポーター席で見ていた筆者や周りの在日の人々にも予測がつかなかった。
 その後、ようやく日本はベンチワークで勝負を仕掛ける。ジーコ監督は結果がかかれば、交代もまともだということだろうか。中盤をいじるかと思われたが、まずは鈴木選手に代えドイツで好調な高原選手を投入、そして田中選手に代え中村選手を投入し、おそらく4−4−2のボックス型にシステム変更したと思われる。
 システム変更か人間(欧州組)の交代、どちらがより効いたか(実際には相乗効果がある)と考えれば、おそらく後者、特に中村選手の影響が大きかったのではないだろうか。高原選手はとにかくゴールに直接向かっていく姿勢でアピールし、中村選手は相手をひきつけ(北朝鮮が不用意についてくる)、味方をフリーにさせる動きでチームを活性化させた。北朝鮮は日本のポジション変更の対応に加え、欧州組の名前だけでも若干浮き足だったようにも見えた。こうなると、経験の浅いチームはどうしても動揺を隠せなくなってしまう。
 しかし、日本のシュートは精度を欠き、北朝鮮も露骨に引いて守るため、試合の流れは明らかに変わったものの、なかなか突き放すことができない。そして34分、筆者も期待していた最終兵器、大黒選手を投入する。玉田選手を下げたことから、とにかくフォワードが得点しろ、というメッセージだろうか。
 ここからは北朝鮮が耐える時間帯となり、日本もまさかのドローになるかという非常に緊迫した時間帯が続く。試合の流れ自体は完全に日本が掴んでいるが、最後の決定打がない。
 そんなじれるような長い長い時間が続くが、ロスタイム、北朝鮮のGKがパンチングをミスり、こぼれ球が福西選手の目の前に転がり、目の前の大黒選手に返し、それを期待のストライカーが振り向きざまでゴールする。最後の最後でようやく日本は勝利をつかんだ。
   
まとめ
 これほどの苦戦は予想していなかった、というのが大方の意見ではないだろうか。その原因としては、まず、北朝鮮が小柄という面で劣る身体能力のハンディキャップを感じさせず、スピードを最大限に生かす戦術を、ほぼ完璧に(中村選手が登場するまでは)遂行したことだ。この戦術は、我々似たような体型の日本人にとっても理想的なものと言えよう。しかも、この戦術はボール支配率を極端に維持する消極的な日本の戦術に対しては、まさに天敵とも呼べそうなほど機能した。彼らが日本のお株を奪い、あわや金星を記録するか、という大善戦を繰り広げたことは、残念ながら認めなければならない。
 日本代表は、ここ3試合で尻下がりに勢いを落とし、特に欧州組が出場するまでは今年最もひどい士気だった。勝ちパターンとして描いていたものは、従来と同じく何よりもボールを失わないことを第一とし、リスクのある攻撃を仕掛けるよりも、より確実なセットプレーに依存するという先行逃げ切り作戦だった。北朝鮮に対してはこの戦い方で通用するだろうと筆者も考えていたが、生憎北朝鮮はこの弱点を分析し、ほぼ万全の対策を練ってきた。
 五輪代表の山本監督が主張していた「味方を追い抜く動き」が「大人の戦い方2004」を見事に打ち砕くシーンだった。スピーディにワンタッチでボールを繋いでくる技術がここまで洗練されていることは、間違いなく驚嘆に値する。軍隊を髣髴させるほど完璧に調練されていた。日本代表は最後の最後で守備陣が健闘したが、次から次へと走りこみ、決してあきらめてこない相手に随分と苦労させられた。中盤は完全に振り回され、ボールを奪うタイミングを逸し、ルーズボールの多くが先に拾われてしまった。北朝鮮のスタートダッシュとスタミナに完全に分があったのも、サッカー用語ではメンタル勝負に勝っているからと表現されることが多い。つまり、勝ちたいと思うからこそより多くの挑戦や自分の役割をしぶとく続けられるということだ。
 そして、試合中最も嫌気を感じたのが、日本代表が勝つための闘争心を表に出さないことである。格下相手に逃げ切るためのちょっとしたテクニックはあるかもしれないが、自らが勝つために挑戦するという気合いはどこにいってしまったのだろうか。なぜパスの受け手がもらうと失いやすい正面パスを繰り返すのだろうか。こういった相手をなめた姿勢や工夫のない戦い方が、気迫で押され、苦戦する要因になるものだ。結局中村選手ら欧州組依存状況は変わっていない。
 この作戦が最終予選では通用しないことが露呈した今、少なくともこの国内組だけでGL突破は難しいだろう。今後は、欧州組を加えた上で新たな作戦(改良するのはあり)を考えなければならなくなった。ゴールキーパーが筆者の記憶に残る限りでは最も下手であったことと、ミドルシュートの精度の悪さに助けられた勝利であることは否めない。
 一方、敗れはしたものの、今夜の北朝鮮代表の気迫、スタミナ、戦術遂行能力については、日本も大いに学ぶべきである。小柄であることを躊躇せず、勢いに乗ってプレスやチャージを繰り返すことで、軟弱な日本代表はかなり消極的になった。北朝鮮代表はこのグループ最強と思える日本に対して全く臆することなく本当に勝つつもりで戦ってきた。筆者は対戦相手が北朝鮮なのか韓国なのかよくわからなくなったほどだ。
 愛国心が強く、日本をライバル視している国家の代表は、恐ろしいまでの集中力を発揮することが明らかになった。筆者の隣の席で観戦し、試合終了後とてつもなくがっかりしていた在日朝鮮人の友人も、この敗北で落ち込むことなく、北朝鮮代表は次につながる自信と経験を得た、と思ってもらいたいものだ。彼らが今回勝てなかったのは、多少国際経験に乏しく、土壇場になってそのもろさが露呈してしまっただけのことだ。

 今夜のレフェリーは、多少イエローカードの基準が曖昧だったが、笛自体は公平だった。今後の調整試合では、本番のレフェリーと同じ国籍か近い国籍にするなど、人選にも気を配るべきだろう。

放送陣に対して
 筆者はテレビ朝日を見ていたが、相変わらず解説は異常とも思えるほどひどかった。こんな質の悪い番組が地上波で放送されているうちは、視聴者のサッカーを見る目も日本のサッカーも育たないだろう。もし日本がワールドカップに行けなかったら、テレビ朝日も深く謝罪した方が良い。どう考えても、この実況陣を賞賛する要素は何一つない。私は何も聞いていないし、何も覚えていない。

採点の比較

右の列の赤字部分は「サッカーマガジン」より引用しています。


私の採点
サッカーマガジン
川口能活 5.5
6.0
田中誠
6.0
6.0
→中村俊輔
7.5
6.5
宮本恒靖
6.0
6.0
中澤佑二
6.0
6.0
加地亮
5.0
5.0
遠藤保仁 5.0
6.0
福西崇史
4.5
5.5
三都主アレサンドロ
6.0
5.5
小笠原満男
6.0
6.5
鈴木隆行
5.0
5.0
→高原直泰
6.5
6.0
玉田圭司
5.5
5.0
→大黒将志
7.0
7.0
ジーコ
5.0
6.0
試合の総評
5.5
-

 本日のMVPは中村選手とする。彼が入ることだけで北朝鮮は萎縮し、実際にボールキープによってフリーの選手やスペースを作る動きが非常に効果的だった。最も流れを変えたことを評価したい。準MVPは、決勝ゴールの大黒選手とする。得点シーンはボールが良いところに転がってきたというある意味幸運もあったが、ドリブル突破などゴールに向かう姿勢で威圧感を与えたことを評価したい。交代選手たちは、自分たちがどのようなプレイをすれば効果的なのかを、ベンチで良く考えていたはずだ。一方のA級戦犯は、中盤、特にダブルボランチと見る。なお、5.0以下の評価の選手は今後の最終予選でも通用しない可能性が高いので、代役を探した方が良い、という筆者の意見が込められている。
 川口GKは、失点以外はほぼパーフェクトだった。筆者も会場で観戦している限りは、クロスが飛んでくるだろうと予想していた。もしかすると、狙ったシュートというよりも単にミスキックだったかもしれない。6.0に近い。
 守備陣は、スピードのある相手に苦戦しながらも、1対1の強さを発揮した。何本か前線に放り込むロングボールはなかなか効果的で、セットプレーに飛び込むタイミングもよく練られている。全体的に及第点。
 加地選手は最も接触プレイにやられた一人。ちょっとしたショルダーチャージで何度も倒され、ミスでボールを失いすぎた。2枚がかりで進行方向に蓋をされ、フリーになれなかった前半はまともなクロスをほとんど供給できなかった。中村選手出場後、フリーになればクロスを上げられるのだから、そこまでフェイントなどで持ち込めるようにすべき。遠藤選手はA級戦犯の一人。壁として最終ラインの前に張りつき、運動量の少ないタイプは、スピードがありパスワークのある相手には致命的に弱い。プレスのタイミングを失い、後手になり走らされ、何度も無力化された。また、攻撃の起点としても、馬鹿正直に混んでいる縦パス方ばかり多用し、相手にすぐ囲まれることで攻撃のリズムを刻むことができなかった。逆サイドに展開する発想はなかったのだろうか。福西選手もほぼ同じで、さらに危ないエリアでボールを簡単に失うシーンが気になった。サントス選手は2回ほどつまらないパスミスがあったが、マークが厳しい中でもフェイントを織り交ぜ、効果的なクロスを供給した。ただし、多少熱くなって審判に激しく当たったために、合わせて一本でイエローカードをもらった気がしないでもない。小笠原選手は、後半のようにフリーならば小手先のテクニックはあるが、相手のプレスを極端に嫌がり、すぐに消極的なバックパスやサイドへの逃げパスを繰り返してしまうのは非常にいただけない。相手を背負い、スペースを作り、パスの受け手にとってもらいやすいタイミングを演出しなければ、司令塔として活躍できない。北朝鮮にも大したことはできない、となめられていたのではないだろうか。対照的に、後半出場の中村選手は積極的に走り回り、相手を引きつけ、翻弄することで周囲のメンバーを生かし、攻撃のリズムを整えた。欧州組が必要なポジションの一つである。
 鈴木選手は、あまりのスピードのなさにほとんど機能しなかった。ファールを待つというタイプは、この手の早いディフェンスを天敵としているようである。ガツガツした接触プレイ勝負と悪運以外では、あまり役に立たないようだ。高原選手は得点こそならなかったが、クラブでの好調を維持し、積極的にゴールに向かうことで、ただでさえびびっていたキーパーをさらにびびらせた。玉田選手は、ボールのもらい方が相手の読んでいる場所、難しい場所に突っ込んでしまう傾向にあった。特に前半のように誰もボールを溜められず、相手の運動量が圧倒的な状況においては、持ち前のスピードを生かしたボールのもらい方をもっと工夫しなければならないだろう。
 ジーコ監督について、ホームでありながら、2点目を狙わずアジアカップ仕様の運動量の少ない逃げの姿勢を維持したのは、スピーディな相手の勢いをさらに加速させてしまうミスとなった。結果論として交代組が好調だったから良かったものの、相手のスピード対策を怠った罪は重い。北朝鮮は国際経験が浅く、GKがド下手で、ミドルシュートの精度がイマイチだったから助かったものの、これを決められるストライカーを有するチームが同じような戦術で臨んできた場合、0-3で負けても不思議ではないだろう。この純国内組で最終予選を勝ち抜くことの困難さを露呈したのだから、今後はいかに欧州組をうまく合流させるかがカギとなってくる。
 試合としては、試合開始早々のFKによる得点で日本は事実上攻撃を止めてしまい、衰えぬ北朝鮮の闘志に防戦一方の形となった。中村選手の交代からようやく勝利への闘争心を表すようになった。合宿を通じて、国内組は仲良しで雰囲気も良くなったかもしれないが、戦う集団とはとても思えなかった。こんな試合をやっていれば、最終予選ではどこにも勝てない。こんな合宿では結果が出せず、意味がないということだ。


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