2005年3月25日(金曜日/晴) W杯アジア地区最終予選

アザディ・スタジアム@テヘラン

 日本代表 vs. イラン代表
(1-2)

得点
福西 (後半21分)

失点
ハシェミアン(前半25分)(後半30分)

警告
福西(前半34分)
小野(後半26分)

レフェリー
シンガポール人(マイディン)、タイ人、トルクメニスタン人

NHK衛星第一
実況:内山俊哉 解説:井原正巳

<日本代表メンバー>
GK:1 楢崎正剛
DF:21 加地亮、5 宮本恒靖(Cap)、22 中澤佑二、17 三浦淳宏
MF:15 福西崇史、18 小野伸二→8 小笠原満男(後半34分)、7 中田英寿、10 中村俊輔
FW:20 高原直泰→31 大黒将志(後半37分)、28 玉田圭司→13 柳沢敦(後半17分)

サブ:12 土肥洋一、3 松田直樹、6 中田浩二、29 稲本潤一

「これがジーコの限界」

展望
 事実上のアジア頂上決戦、日本(FIFAランキング18位)はアウェイでのイラン(FIFAランキング20位)戦に臨む。より欧州的に個人主義的な色合いの強い西アジアと、まさにアジア的に集団主義色の強い東アジアのトップ対決でもある。
 筆者は先日のバーレーン対イラン(ドロー)を見ていないが、これまでの戦い振り返れば、イランの身体能力はアジア人離れしており、個人の高い身体能力を生かし、縦のドリブルが強く、中東らしいカウンターアタックを得意としているチームである。一方の日本だが、身体能力が劣るとはいえ、それを集団の力でカバーし、規律をしっかり守ることにはかなりの優位を持っている。
 テヘランのアザディ・スタジアムでは格安チケットの販売や2階席の無料開放などを実施し、正月休みのイランサポーター10万人以上が集結するという圧倒的アウェイが予想される。しかも、初戦ドローだったイランは間違いなくホームで勝ち点3を狙ってくるはずである。なお、そこは標高が1000メートル以上あり、やや空気が薄いというのが気になるところである。
 日本代表は、ジーコ監督が好む欧州組を召集し、ドイツ合宿を行ったが、実際の練習期間を考えると、やや準備不足の感がある。故障のため所属先のフィオレンティーナではレギュラーとは言い難い中田英を強行出場させるようである。4-2-3-1で3トップ気味に対応するためなのか、ヒデ・シフトとでも呼べそうな4-4-2で戦うようである。
 ジーコ監督のひらめきというか思いつきというか、良くも悪くも柔軟的に見えるこの発想で強豪イランと戦うには、外部の人間としてはややリスクが高いように見える。内部の人間には対策ができていると思いたいが、30日のバーレーン戦に向けた戦いならばともかく、3バックの安定感を今になって変える必然性がサポーターにまで伝わってこないことはやや否めない。
 戦術についても触れておきたい。インターネットなどで調べる限り、日本代表はミドルシュートの練習、特にフォワードをポストプレイとして中盤にシュートを打たせることを狙っているようである。これは細かい組織的プレイを苦手とするイランには効果的である。また、右側の攻撃力(マハダビキア)が高い対策をしているようである。おそらく、イランはロングボールを多用しとにかくワントップのダエイに当て、こぼれ球を3人の攻撃的フォワードに拾わせるという作戦を展開すると思われる。宮本選手、加地選手あたりが露骨なフィジカル勝負では分が悪いと思われるが、その対策は大丈夫だろうか。
予想スタメン

楢崎
加地 宮本 中澤 三浦
福西  小野
中田   中村
高原  玉田
 ジーコ監督が最も好むと思われるボックス型の4−4−2に稲本選手を除く欧州組を置いた形となる。欧州組が久しぶりにこれだけ出場するのは期待できるが、ぶっつけ本番気味でどれだけ力が出せるだろうか。注目の選手は、もちろん中田英寿選手である。彼がどれだけチームに溶け込み、リーダーシップを発揮できるかがこの試合の行方を左右することになろう。
 北朝鮮戦で見せたように、あまりに逃げ腰の戦い方を早い時間で切り出すのは、大黒選手というスーパーサブがいたとしても、ホームのイランの勢いをひっくり返すのは難しいと思われる。イランのシュートを大量に被弾し、ミドルシュートで粉砕されてしまうだろう。
 急造4バックでは、強豪イラン相手に守りきれるかどうか正直厳しいものがある。いずれにせよ、アウェイでドローならば日本には勝ちに等しいといっていいだろう。ホームでの戦いにヒントが得られるようであれば、上出来くらいのパフォーマンスに期待したい。
 この試合、現実的には2-1で敗北、希望を込めてスコアレスドローに期待する。

前半
 日本はなかなかの立ち上がりである。縦に強いイランの正面に蓋をし、数的優位、組織力で勝負しているようである。しかし、アウェイの高地ゆえの影響か、次第にペースダウン、長い我慢の時間が続く。
 日本はラインを引いて守るも、それで恐れをなすようなイランではなく、1対1のドリブル勝負や多少の距離があろうとも積極的にシュートを放ってくる。また、攻撃のリズムが共通理解されていないのか、中盤のミスでボールを失うことが目立った。
 失点は25分、中村選手が空中戦で巻き込まれたFKから(カメラのスイッチングが悪かった)、日本の右サイドに展開する。加地選手が接触プレイで倒されたこぼれ球を打たれてシュート。これは加地選手のクリアミスだろう。
 日本の攻撃は、トップにボールが落ち着かず、空中戦で分が悪く、攻撃的MFがキープしてもそこからの展開に華やかさがなかった。逆サイドへの展開、ワンツー、コンビネーションプレイ全般的に極めて乏しかった。急造コンビの影響もあって、前半は攻撃のこれという形をなかなか作れない。
 イランの攻撃の特徴であるドリブルが予想以上に鋭く、何度もペナルティエリアにえぐり込まれ、危ないシーンを献上してしまった。

後半
 フォワードを一枚くらい変えてくるかと思われたが、メンバー交代はないまま後半再開となる。
 立ち上がりは安定しており、早く同点に追いつこうという覇気はありそうだ。
 小野選手のドリブル突破で得たFKはイランGKのナイスキャッチだった。8分のイランのカウンターアタックはかろうじてオフサイドだった。日本はややミスが多く、リズムに乗り切れない。
 17分、玉田選手に交代し、欧州組の柳沢選手を投入する。イランにチームメイトがいるため、多少精神的動揺を与えられたかもしれない。
 そして直後の21分、中田選手のクロスから柳沢選手が競り合ったこぼれ球を福西選手がボレーで押し込み、ついに同点に追いつく。
 しかし、イランも突き放すというか試合の流れを変える勢いがあった。30分、マハダビキアのスルーパスからカリミがクロスボール、加地選手がなぜかそれを見送る手痛いミスで再度ハシェミアンにゴールを許す。
 そしてイランは早速カリミを下げ、逃げ切りのカードを切った。対する日本はなぜか小野選手を下げ、小笠原選手を投入する(中田選手をボランチに下げ、小笠原選手は攻撃的MFに入る)。筆者は高原選手を下げ、大黒選手を投入すべきと思ったが。逆に、小笠原選手が出場することで、状況判断も遅くかといってキープもできず、攻撃のリズムを崩してしまった感があった。
 37分、ようやく大黒選手を高原選手に変えるが、その後の決定的なチャンスは逃げ切るイランの方に分があった。日本の攻撃陣は、最後まで高い身体能力を持つ頑強なイランディフェンスを崩せず、攻撃的な見所のないまま試合を終える。久しぶりの敗戦となった。

まとめ
 完敗という言葉がふさわしい敗北である。ぶっつけ本番のシステムは、悪運がなければこんなものであろう。
 敗因としては、フォワードが異常にプレスにはまったという個人レベルの問題もあるが、基本的にはこの急造システムに帰着できよう。中盤から前線への展開(しばしば単調であり、何度も失敗した)が遅れるのは、お互いがどのように動くか共通理解がないためであろう。中盤でボールを失うなどつまらないミスが多いのは、次にどのような展開になるのか判断するのに時間がかかるためである。
 当たり前のことだが、3-5-2で良い流れを作っているのに下手に欧州組を重視し、システム変更したことで、より勝利が遠のき、相手に勝ち点をプレゼントしてしまったような結果になった。1試合調整試合を経れば、欧州組と国内組のコンビネーションも格段に向上したのでは、と心から思う。このような試合をすれば、アウェイであまり勝つつもりがなかった消化試合の印象を与えかねない。サポーターに対して極めて無礼である。
 結果的にミドルシュートの精度のなさにも助けられたが、それでも良く選手は頑張った(前線以外はそう思う)というのは何の慰めにもならない。このような戦い方は、ドイツレベルの相手に通用しない可能性が高くなる。今後は、ますます欧州組と国内組の調整の問題が難しくなってくるだろう。今夜の収穫は、勝ち点3を支払って、刹那的なシステムは通用しないことを理解したくらいだろう。

放送陣に対して
 NHKはあまり騒がしくなくて良いが、いずれにせよ私の不動の首位はフジテレビであることに変わりはなく、第2位もTBSで変わりがない。
 井原氏は口数が少なく、サッカー用語がわかる人向けのような解説をする。これは旧日産系列(水沼、木村、金田)に見られる傾向なのかもしれない。実況はよくサッカーを予習していると思わせる仕事で、十分及第点。


採点の比較

右の列の赤字部分は「サッカーマガジン」より引用しています。


私の採点
サッカーマガジン
楢崎正剛 6.5
-
加地亮
4.0
*
宮本恒靖
6.0
-
中澤佑二
6.0
*
三浦淳宏
6.0
*
福西崇史
6.5
*
小野伸二 6.0
*
→ 小笠原満男
5.0
*
中田英寿
6.0
*
中村俊輔
6.0
*
高原直泰
5.0
*
→ 大黒将志
-
*
玉田圭司
4.5
*
→ 柳沢敦
5.5
*
ジーコ
4.5
*
試合の総評
4.5
-
 敗れておいてMVPというのも難しい。あえて言えばファインセーブを連発した楢崎GKであろう。全体的に評価をすれば、前に行くほど評価が辛くなる。
 守備について、加地選手はA級戦犯である。2失点は彼が原因であり、フィジカルプレイ、空中での競り合いの致命的な弱さを露呈した。ミスも多く、かといって爆発的な攻撃力を誇っているというわけでもないので、そろそろ交代の時期だろう。宮本選手はこれまでと同様、消極的過ぎると思えるほどにラインを引いて良く守った。結果的には数多く被弾しながらも守りきれたが、1対1で強引に勝負されるとやや危ういのでは、という不安を残した。中澤選手は空中戦では互角以上に戦った。スピードのあるドリブル(地上戦)には苦労したか。三浦選手は守備の負担が大きかったが、辛抱強く守った。
 中盤について、福西選手はお得意のごっつぁんゴールだったが、守備でもタイミング良くカットするなどらしさをアピールした。小野選手は遠い位置からのシュートを打つなど積極的なゴールに向かう姿勢を見せた。急造ながらも攻撃のきっかけを演出した。小笠原選手は採点するか悩ましいところもあるが、ボールを持った時点ですでに囲まれ簡単にボールを失い、明らかにキープできないという交代後のリズムの悪さを示した。中田選手は、おそらくまだ試合勘やコンディションが完璧ではないと思われ、彼らしくないつまらないミスも多かったが、アシストやスルーパスなど新しい攻撃の形を見せた。十分及第点。中村選手は結果的にフォワードにつながらなかったが、クロスボールを供給し、惜しいシュートも放った。厳しいプレスにも負けず、中心人物として今後とも期待できる。時間をかけて欧州組中心のコンビネーションを育成したい。
 フォワードについて、全体的に不合格である。高原選手はここ最近でもワーストのパフォーマンスだった。トラップが雑でボールが落ち着かず、前を向くことなく、空中戦でも分が悪かった。玉田選手もワーストだった。ボールのもらい方に工夫がなく、ろくにシュートも打てず完全にイラン守備陣に封じ込まれた。柳沢選手が活躍できたのは入って10分くらいだけだった。次第にポジショニングを読まれ、玉田選手同様消えた時間が長かった。大黒選手はもっと早い時間での投入が望ましかった。
 ジーコ監督はこの敗戦の責任を全て負うべきである。GL勝ち抜けが決まってもいないのに、慣れないシステムを強行し、ドローを逃した。何よりこのシステムで勝ち点を犠牲にしながらも、得点パターンが見えなかったことが痛すぎる。これで次のホームでバーレーンに勝てなくても、プレーオフ進出があると楽観的に考えているのだろうか。
 引き分けにもならず、かといって良い展開もろくに作れず、収穫はほとんどなかった。中東向けの守備は多少見られたが、中東対策の攻撃が何だったのかはこの試合を見ても定かではない。このような試合は親善試合でやるべきだ。次のホームバーレーン戦で勝ち点3を逃したら、ジーコ監督はすぐに辞めた方がいい。


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