サッカーのモチーフは戦争だと聞いたことがある。戦争において、敗者は領土や財産など、勝者に奪い取られてしまう。そういった非人間的な手段をとらず、遊びとしての陣取りがサッカーだという。サッカーではお互いの陣地を持ち、互いにゴールを奪い合う。どことなく同じ匂いがしないだろうか。もちろんモチーフが何であろうとサッカーはサッカーである。しかし、こう考えるといろいろと辻褄の合うことが多い。
 私が思うにサッカーは男性のスポーツであり、女性がやるものではない。サッカーは集団格闘技であり、戦争である。戦場で殺し合いをするのは男だけで十分だ。実際の女子サッカーを見ても、レベルは数段低く、正直面白くない。男性の方が体格的には数段勝っているため、同じ競技をしても男性のそれの方が概して優れているからである。同様にして、クラシック・バレエなどは女性のためにあるようなものである。単に私が昔付き合っていた彼女がバレエをやっていたため、何となくそう思っているだけなのだが。

 競技としてのサッカーは紳士のスポーツである。私の解釈によれば、サッカーとは紳士による合法的で上品な戦争なのだ。なぜなら、イエローカードやレッドカードをもらうような汚い反則や行為は非紳士的プレイと言われ、紳士として相応しくない行為をする選手は退場すべき、グラウンドに立つ資格はないからである。これは観念的な言い回しだが、現実的に考えても、相手を倒すためだけの後ろからのタックルなどは大怪我を誘発しやすい極めて危険な反則であり、スポーツマンシップからしても到底容認することなどできないのだ。言うまでもなく、相手選手や審判に暴力を振るったり、暴言を吐いたりするのは野蛮な行為である。しかしながら、暗黙の了解として、審判に気づかれなければ多少の反則はありだ。ばれずにやればいい。
 私は滅多に反則を犯す選手ではなかったが、グラウンドに立つ時はやや興奮しているため、汚い反則をやられたらやり返すくらいの闘争心は持っている。むしろ、それくらいの闘争本能がなければ戦場で生き残ることはできないのだ。

 サッカーのルールは比較的変化しやすく、数年に一度程度の割合で改定されている。私がサッカーをやっている頃からすると、コーナーキックとゴールキックの蹴る位置が自由になり、キーパーへのバックパスの制限、ロス・タイム(lost time tが連続するのでロスト・タイムとは言わない。最近はadditional time(他にはlost time, injury time)といい、追加時間、延長時間といったほうがより正しい。)の表示、延長戦の決着方式…などがある。
 しかし、自信を持って断言できるのだが、オフサイドのルールだけは絶対に変化することがない。仮にオフサイドがないとすると、最も有効な作戦は、ストライカーをゴール前に張り付かせ、単純に前方へボールをボカボカ蹴って彼らにつなぐことになる。このルールをなくすと、サッカーのゲーム性は完全に失われてしまうのだ。オフサイドのないサッカーは、バットのない野球、水に濡れない水泳、投げ技禁止の柔道に等しい。
 オフサイドとは、サッカーがエキサイティングなスポーツであるための最も重要なルールであり、いわゆる待ち伏せ禁止のルールである。待ち伏せして攻撃する(得点する)ことは卑怯で下劣な方法であり、正々堂々と戦うべき神聖なグラウンド上では認めることができないのである。

 日本人のサッカー選手は、試合中手を挙げて「オフサイ!」と反則をアピールする。たかが「ド」の一文字だけをなぜ省略するのかと言われても私にはわからない。とにかく、普通「オフサイド!」とはいわない。サッカー用語として覚えていただきたい。
 オフサイドは非常に難解なルールの一つといえよう。私もオフサイドの意義を十分理解できるようになった(ルールを理解し、戦術的に利用できるようになった)のは、中学3年以降である。チームメイトのディフェンス・ラインを構成する一人が理解していなかったため、我がチームのオフサイドトラップはしばしば自爆行為に陥っていた。当時の中学生のレベルで言うと、レギュラー11人のうち一人か二人はオフサイドの意味がわかっておらず、副審(当時は線審とかラインズマンと言った)の役割が理解できないくらいだったろう。おそらく、一般のサッカーファンでオフサイドを解説できる人はそれほど多くないのではないか。
 私はルールブックなど読んだことがない(読んだことがあるのかもしれないが、実際には何も覚えていない)。ただ、あまりに多くの経験をしているために、直感的にオフサイドかどうかが何となくわかるのだ。たとえ一語一句間違えずルールブックを暗記したとしても、実際のゲームで裁けなければそれは無意味である。このように考えると、プレイヤー側の感覚によるルールの解説も有益であると思う。私の経験によれば、オフサイドの定義は次のようになる。(前説がやけに長いな)
敵の陣地において、プレイに関与している前方の味方に対してパス(間接フリーキックとスローインを除くものを指す)を出した瞬間、その味方が最終バックラインよりもキーパー寄りに位置していた場合、オフサイドである。
 何とも味わい深い数行である。
「出した瞬間」「最終バックライン」
 これがオフサイドの最も重要な要素であり、オフサイドの発生のキーワードである。
 副審というタッチライン(テレビで見るとトラックに平行な横に長いライン)沿いに旗を持った審判が両サイドに二人いる。サッカーのグラウンドは広く、死角になるプレイもあるので、一人の審判(主審)だけでジャッジすることは不十分である。そこで、副審の登場である。死角になっている部分に加え、タッチラインとオフサイドラインのラインに関する監視を専門としている。前者については主審の補完的な役割があり、後者については副審独自の機能に近い。ただし、副審にはプレイを止める権利はなく、旗を揚げて主審に知らせるだけである。あくまでジャッジをするのは主審である。
 さて、この副審の守備範囲は、片方のコートのタッチライン沿いだけである。そして、必ず最終バックラインに位置していなければならない。オフサイドの定義をラフに言うと、パスを出した瞬間に、攻撃側の選手がオフサイドラインを超えていた場合(ライン上はセーフであり、完全に一歩以上出ていた場合のように思う)、副審から見て右側にいれば、オフサイドになる。その瞬間に、副審は立ち止まり勢い良くズバッと旗を揚げる。それが主審に伝わりオフサイドとなる(おそらく視界の端に入る派手な旗の動きと、旗を揚げた時のズババッという音、どちらかというと後者を頼りにしていると思う。主審はあくまでプレイに注目していなければならないからだ)。もちろん状況に応じて主審がオフサイドを流すこともある。

 定義の重要なキーワードを簡単なものから説明していこう。

敵の陣地
 まず大原則として味方の陣地で味方がオフサイドになることは絶対にない。ここでオフサイドを間違えることはまずないのだが、私のサッカー人生において、例外的にたった一度だけ味方の陣地で味方がオフサイドになったことがある。もちろんこれは明らかな誤審であり、「海で焼死した」とか、「砂漠で水死した」という話に等しい。海中で燃えるはずがないし、水のない砂漠で溺れるはずがない。オフサイドが起こるのは敵の陣地においてだけである。
 脱線するが、1980年代後半、小学生サッカーの審判の質は今思うと非常に低いものがあった。彼らの大体が4級の審判で、当時平塚市には2級以上の審判は多くとも10人いなかったように思う。3級も少なく(下手な3級は多い)、大抵が4級(最も下)であった。ちなみに、4級を取るのは難しくなく、3級以上が格段に難しくなるそうだ。練習試合などでは、未熟な審判が経験を積むために小学生が下手な審判の犠牲になっていたのだ。下手なプレイに下手なジャッジ、それは底辺ゆえの悲しさである。私も近いうちにライセンスを取得しようかな。

パス
 これはさほど重要なポイントではない。注意すべき点は、パスとは味方につなぐために意図的にボールを出すことであり、ドリブル、シュート、あるいはシュートが跳ね返ったような偶発的なこぼれ球などはパスとみなされない(まれに誤審でオフサイドになる)。間接フリーキック(オフサイドなどの反則)とスローインは、たとえ前方に出しても、オフサイド対象のパスとはならない。
 小学生サッカーの場合、ドリブルが下手で大きいため、パスとドリブルの区別がつきにくいという話がある。私がサッカー少年だった頃、先生(3級の資格を持つ)はいつもそう喋っていた。プロの場合、ここで誤審が生じることはまずありえない。

前方の
 これは易しい。パスを出す選手と受け取る味方を直線で結び、それがセンターライン(ゴールラインなどでも)と平行ならば真横なのでセーフ。しかし、少しでもその角度より前方に出せば(サッカー用語で「プラスのパス」という。後方に出すパスは「マイナス」である。)オフサイドになる。コーナーキックは最終ラインから蹴りだすため、プラスになることは絶対にない(なればゴールラインを割っているのでゴールキックになる)。例えば、コーナーキックには絶対にオフサイドはないのだ。ただし、セカンドボール以降はオフサイド対象になるので、重要なのはコーナーキックからのリアクションである。

プレイに関与している
 最近のオフサイドでジャッジが割れることがあるやや難解なポイントである。
 まず簡単な例を挙げよう。もし左サイドでプレイが進行中であり、ボールが左サイドにあったとする。そして左側の前方へパス(間接フリーキックとスローインを除く)を出した瞬間に、右サイドの選手がオフサイドラインを超えていた場合(一般にオフサイドラインに引っかかるという。)、それはオフサイドにならない。このように、距離が十分離れていてそのプレイに直接関係がない選手はオフサイドの対象にはならないのだ。また、プレイに参加していない例として、負傷して倒れている場合などがある。距離が十分離れている、あるいはプレイに関与していない選手は、たとえオフサイドラインに引っかかっていようと、それはオフサイドの対象とならない。
 では、ボールに触れていなければプレイに参加していないというのだろうか。それはおそらく違う。ボールの方を振り向いたり、足を延ばしたり、一瞬でも身体がボールに反応すればプレイに関与したとみなされるのである。最近のジャッジの傾向では、ボールに触れる意思がなくとも、選手のリーチ内(ボールに触れられる距離、やや厳しく)にボールが転がれば、反応がなくとも大抵オフサイドになる。
 具体的に選手の半径何メートルなどのルールがないため(多分)、ごくまれに不自然なジャッジもあるし、ゴール・キーパーがキャッチできれば流してしまうこともたまにある。

 というわけで、皆様のオフサイドの解釈に少しでも役立てば幸いです。もう少し図表を加えて修正したいと思っています。理想的には、実際の試合で解説できればいいのですが・・・。

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