サッカーにおける戦術について



前書き

 サッカー経験者にとって慣れ親しんだ専門用語も、一般のファンには必ずしも通じないことが少 なくない。テレビ中継においても私のレポートでも専門用語を避けることは難しいが、大まかな概念を把握していれば、サッカーで用いられるとっつきにくい言 葉も理解しやすくなると思われる。
 これは、チームの強さとその構成を示す最もシンプルで私が非常に好む表である。現実には必ずしもこのように完璧に分かれるわけではないが、概 念的な議論に対しては問題なく耐えうるものである。

tactics strategy
skill

 tacticsとは直訳すれば「個々の戦闘の用兵、戦術」となり、私の日本語サッカー用語では「個人(間)戦術」と訳される。どういった技がこのカテゴ リかと言うと、個人レベルのアクションすべて...例えばシュートやパスといった基本的なものはもちろん、「私のスピードに乗ったドリブルでディフェンス を交わせば得点できる」とか「〜というフェイントで相手を騙し、こうすれば私だけでボールを獲れる」など、基本的に一人で実行可能な攻撃や守備の技、あら ゆるアイディアを指している。ただし、ワン・ツーや壁パスなどごく限られた数のサポートを必要とする場合(個人戦術)も含まれる。
 次に、strategyとは「全体の作戦計画、戦略」となり、私の日本語サッカー用語では「チーム戦術」と訳される。チームとして目指す方向性の攻撃や 守備あらゆる行動を含み、別の言葉に置き換えれば、チームスタイル、チームカラー、コンセプト、究極的には監督のイズムや代名詞ともなりうるものだ。具体 的には、プレススタイル、カウンターアタック、オフサイドトラップ、フラット3など、私たちがチームの特徴を捉えるのに使う言葉と解釈すればいいだろう。
 最後にskillとは、「技術」であり、私のサッカー用語でも「技術」である。いかなる技、戦術、アイディアにせよ、それを試合で効果的に実行するため に必要不可欠なことは、充分な練習に裏付けられた技術に他ならない。どんなに優れた計画であろうと、それは技術という土台がなければ所詮机上の空論に過ぎ ず、試合では使い物にならなくなる。それゆえに、この表では、skillが二つの用語を下から支えるように構築されているのである。技術なくして 戦術なし、というわけだ。
 言うまでもなく、この表が大きければ大きいほど、そのチームは強いことになる。skillが最も根底の要素であり、それがなければ何も達成できないのは 比較的容易に想像できようが、対照的に、どんなにskillが堅固であろうと、tacticsやstrategyに乏しいチームも同じように必ずしも強く ないのである。

 これまでジーコ監督は解任騒ぎになるようなこともあったが、その理由はこの表を参考にすると説明しやすい。代表チームというのは、クラブチームに比べれ ば十分な練習時間が確保しにくいため、どうしても寄せ集め的なチームになってしまうのは否めないことだ。私の主観に従えば、世界最高峰の技術を見られるの は、ワールドカップではなく、チャンピオンズ・リーグではないだろうか。
 メンバー間のコミュニケーションも取る時間が足りないため、代表チームにはskillやtacticsが優れていたとしても、しばしばstrategy がより不完全な傾向にある。それを補うために、例えば中東のチームは伝統的にカウンターサッカーを踏襲しているのであろう。フィリップ・トルシエ氏は、自 らの代名詞となるべく「フラット3」というラインディフェンスを敷き、厳しいプレススタイルを徹底した。山本昌邦氏の著書によれば、500ページはあるト ルシエ氏の教科書のうち、代表で行われていた練習はフォーメーションの練習(シャドートレーニング)ばかりで、教科書のごくごく限られた部分(山本氏は5ページと皮肉っていた)しか教えられ なかったという。代表というその場限りの集団においては、私たちのやりたいサッカーはこれなのだ、とチームのコンセプトをしつこいくらい確認しなければ、 そう簡単にstrategyを習得することができないのかもしれない。



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